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観た映画の感想 #55『ヴァチカンのエクソシスト』

『ヴァチカンのエクソシスト』を観ました。

監督:ジュリアス・エイヴァリー
脚本:マイケル・ペトローニ
出演:ラッセル・クロウ、ダニエル・ゾヴァット、アレックス・エッソー、ピーター・デソウザ=フェオニー、ローレル・マースデン、フランコ・ネロ、他

1987年7月、サン・セバスチャン修道院。アモルト神父はローマ教皇から、ある少年の悪魔祓いを依頼される。少年の様子を見て悪魔の仕業だと確信したアモルトは、若き相棒トマース神父とともに本格的な調査を開始。やがて彼らは、中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判の記録と、修道院の地下に眠る邪悪な魂の存在にたどり着く。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/99289/

単純に悪魔祓いもののホラー映画かと思ったんですけど、それ以外のエンタメ要素もてんこ盛りで予想以上に楽しい映画でした。

オカルトホラー映画としてもツボはしっかり押さえてて、とり憑かれた少年の人間じゃなくなりかけてる異形的な不気味さも良かった。特に目線を左右に誘導していくと人間の瞳の横から悪魔の瞳がこんにちわしてきて、一つの目の中に二つの瞳がある状態になるシーンとかは見せ方としても新鮮だったと思いますし、ジャンプスケアも少な目ではありつつ、画面を狭めていったりキャラクターの視点をある一点にさせていったりして、観ている側の意識もある一点に集中させてからの……みたいな驚かせ演出も上手かった。

あとやっぱりホラー映画って映画館で観るのが一番正しく怖がれるんですよね。どこかから謎の物音がするとか、霊障が襲いかかってくる前触れとか、ああいう音の演出って全方位を良いスピーカーに囲まれている状態じゃないと十全に体験できないし、家だと気の散らしどころもいっぱいあるし。

こういうホラー映画で謎解きアドベンチャーパートがあるのも意外だったし、バディムービー好きとしてはトマース神父との師匠・弟子的関係が育っていくのも良くてねー。最初は頼りなかったトマースくんも悪魔祓いを通じて成長していって、師匠(アモルト神父)のピンチを救えるまでに頼もしくなる。そして悪魔祓い行脚の相棒へ……! シンプルだけど熱い!

対する悪魔も幻覚を見せる、霊障で人間を吹き飛ばす、複数の人間に同時に憑依する、退魔バトルもクライマックスに向かうにつれどんどんテンションが上がっていくし、異能バトルものとしても楽しい。

ただ、ホラーエンタメ映画としてはとても面白かったんですけど、一方でどうしても引っかかっちゃう部分もあって。

まず一つ目は(作中での)アモルト神父のトラウマになっている、自分が救うべきだった女の子を救えずに死なせてしまったってやつ。あの女の子が心を病んでしまった原因として、聖職者による性的暴行があったって設定になってたのは明らかに現実社会で実際に起きている聖職者による暴行が元ネタになっていますけど、作中では女の子が死んだのはあくまでアモルト神父個人のトラウマであり罪ってことになってて、そこに関しては以降全く触れられないんですよね。現実にある負の側面を扱うならそれに対する問題提起もあって然るべきだと思うし、それがないなら悲劇を単にエンタメの為に利用しただけになっちゃう。

スペインの異端審問が悪魔に憑依された教会上層部によるものだったっていうのもそう。教会の人間がとんでもない非道を行ったことは紛れもない歴史的な事実なのに、いくらフィクションとはいえそれを悪魔のせいでしたで片づけるのはあまりにも歴史を軽んじてやいませんかと。

エンタメとしては良くできた映画だったからこそ、余計に強烈な違和感として引っかかっちゃって。

ただ繰り返しになりますがホラーエンタメとしては本当に楽しい映画だったんです。続編作る気も満々の終わり方だったし、物語の設定上退治すべき悪魔はまだ199柱もいるので、ホラー映画界の007とかミッションインポッシブルみたいな感じで末永く続くシリーズになればいいなと思います。

あと、アモルト神父って年代的にはウォーレン夫妻とほとんど同時期に活躍した人じゃないですか。だからそのうち死霊館シリーズともコラボできるんじゃないかなーって。退治する側バージョンのフレディVSジェイソンみたいな感じで……
史実では接点のない人物の、歴史上の空白期間を利用した共演ものとしてはRRRという大傑作がすでにあるわけだし、そんな感じでどうか一つ。


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