観た映画の感想 #43『THE WITCH/魔女 -増殖-』
『THE WITCH/魔女 -増殖-』を観ました。
「どう続けるんだ」というジャンルがある
本作の前作にあたる『THE WITCH/魔女』、今まで観た中で「えっ、そういうコトになっちゃうの!?」という衝撃を最も強く受けた映画の一つです。
何が衝撃的だったかというと主人公ジャユンの正体……というか”本性”と、それを演じるキム・ダミさんの演技の切り替わりのとんでもなさで。「まあ恐らく只者ではないだろう」ということは普通に映画を観ていれば分かるんですけど、ジャユンが本領を発揮し始めてからの豹変ぶりがとにかく凄まじくて、全く予想してない方向に突然ハンドルを切り返されたような衝撃を覚えたものです。
で、その手の映画って種明かしの部分に物語的なインパクトがギュッと詰まっているようなもので、その種明かしが全部完了してる状態で続編を作るのって普通はめちゃめちゃ難しいはずなんですよ。じゃあ今作はどういう続編になってるかというと「こういう世界観の映画だということはお分かりいただけましたね? それでは更にエクストリームな世界にお連れいたします!」という作品。前作のような予想外のサプライズを用意するのではなく、むしろ前作で提示された世界観をさらに拡張していく方向での続編。なので前作とは真逆のサプライズを用意した『エスター ファースト・キル』なんかとは対照的な作品ですね。
個人的感想~良かったところ編
まず今回の主人公役のシン・シアさんがすごく良かった。
血まみれの拘束衣で真っ白な雪景色を歩いていく最初のシーンだけでもう「うおーこの人イイ! 優勝!」ってなっちゃいました。
前作主人公のキム・ダミさんもオーディションで獲得した新人だし、すごい新人を見つけてくるキャスティングの嗅覚に関しては全幅の信頼を置いてもいいんじゃないかなーと思います。
前作の日常パートはジャユンが(見かけ上は)普通の女子高生として暮らしてたので友達や家族とのやり取りもよくある日常もの的な雰囲気だったのに対して、今回は最初から情緒の部分だけがまっさらな殺人マシーンなので、ギョンヒとデギル姉弟との交流もターミネーター2的なやり取りになっててほっこり度がアップしていたのも良かった。
デギルに「こういうの(前作でジャユンが見せた超能力を使ったマジック)お前もできないの?」って言われてデギルの後ろにあるガラクタを超能力でブワーッて持ち上げてからかうシーンが本当に可愛くて可愛くて……
ペク統括に雇われた二人を始めとした新キャラ達も漫画的なケレン味たっぷりでおいしい役どころばかりでしたし、終盤の大殺戮に巻き込まれて死んでいく地元ヤクザ達の「こいつらの命軽かったなー」っていうのもよかった。なぜならそういうのを楽しむタイプの映画なので。
個人的感想~いま一つ編
一方でアクションの見せ方には少なくない不満があって。
主人公の子が最初に大暴れする農場でのシーンもクライマックスの四つ巴大乱闘シーンも夜だし、敵も味方もビュンビュン高速で飛び回るので何が起こってるのかがものすごく分かりにくかった。漫画的な荒唐無稽ド派手超能力バトルを前作以上の迫力でやり切りたいという意気込みは買うとしても、もうちょっとじっくり一つ一つのアクションを見せて欲しかった。あとは主人公が別次元の強さだってことの表現が”殴る”→”殴られた人がゴム毬のように遠くまで吹っ飛んでいく”ばかりだったのもちょっと物足りなかったかなーと。そこはもう少しゴア表現多めにしてくれても良かった気がします。
あとは世界観の拡張自体もちょっと性急だったというか、一度にいろんな勢力が現れすぎて勢力図を把握するのが初見だときつかったんですよね……僕はこれ劇場用パンフレットを読んでようやく理解できたくらいだったんですけど、他の方々はどうだったんだろう……?
やりきれるのか……?
『魔女』シリーズ、パンフレットに載ってる監督のインタビューによると「まだ語りたいことの10分の1も語ってない」らしいんですね。マジ……? 額面通りに受け取るとあと映画18本分くらいのストックがあるってことですか……? 確かに今回明らかになった世界各地の支部の話とかも気にはなるけど、そんなにやることある……? っていうのが正直な感想なんですが、本当にやりきれるのか……?
とりあえず3作目ではこういう話になる、っていうフリは今作の最後に見られたので、そこを楽しみにしています。