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映画感想 #149『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』を観ました。

監督:ソイ・チェン
脚本:アウ・キンイー、チャン・タイリー、サム・クァンシン、ジャック・ライチュン
出演:ルイス・クー、レイモンド・ラム、テレンス・ラウ、フィリップ・ン、トニー・ウー、ジャーマン・チョン、リッチー・レン、ケニー・ウォン、サモ・ハン、アーロン・クォック、他

1980年代。香港に密入国した青年チャンは、黒社会のルールを拒んで己の道を選んだために組織から目をつけられてしまう。追い詰められた彼は運命に導かれるように、黒社会に生きる者たちの野望が渦巻く九龍城砦に逃げ込み、そこで出会った3人の仲間たちと深い友情を育んでいく。しかし九龍城砦を巻き込む抗争は激化の一途をたどり、チャンたちはそれぞれの信念を胸に命をかけた戦いに身を投じる。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/102484/

去年に予告を見てからずっと楽しみにしてた映画で、その時点で「こんなん100点満点で200点は余裕で出ちゃうだろうなあ~」なんて思ってたんですが、予想を遥かに超えて100点満点で2億点くらいのものを見せてもらった感じです。まだ1月ですけど、よほどのものが出ない限り2025年の少なくともベストテン入りは確実です。

とにかく観てる間じゅうずっと「こんなに面白い映画を作ってくれてありがとう……!」という感動が続く作品でした。ここまで熱量の高い面白さが続く映画を観たのは個人的には『バーフバリ 王の凱旋』以来。
どう面白かったかを端的に言うなら、僕の中にある色々な「こんな〇〇が観たかった」を最初から最後まで最高到達点で叶え続けてくれる映画だった、ということになるんですが、その中でも最たるのは「こんな九龍城砦エンターテインメントが観たかった!」でしょうか。

これも個人的な体験の話になってしまいますが、僕がサブカルチャーに触れ始めた思春期の頃って『Get Backers-奪還屋-』があって『クーロンズゲート』があって『シェンムー』があって、もうちょっと上の世代には押井守監督版の攻殻機動隊もあって、でもあの世界観のモデルになった九龍城砦そのものは既に解体されていて、っていう世代なので、九龍城砦には「憧れのスラム」みたいなロマンがずっとある。

勿論ただのロマンで片づけていい場所ではないだろうし、劇中でも陳と信一たちが友情を深めていく流れの直後に貧民の女性がゴミみたいに殺されたり、いうてもスラム街であるという現実を容赦なく叩きつけてくる部分もありますけど、それでもそこに生きていた人たちが確かにいたことを描くのは両立できるし、むしろ両方描いてるからこそ誠実だとも言えると思うんですよね。
それこそエンドロールのバックで流れてる、城砦内での暮らしの様子を淡々と映していく映像は本編観終わったあとだからこそ余計にぐっとくるじゃないですか。9.11の後に作られた「ニューヨークが舞台の映画」にWTCビルへのトリビュートを捧げる映画が多いのと似たようなもので、「今はもうない何処かと、そこで生きていた人たちへのトリビュート映画」としても非常に良い余韻のある一作でした。

で、「こんな〇〇が観たかった」のもう一つ、「こんなカンフー映画が観たかった!」なんですが、こっちも勿論文句なしに最高でしたよ。
九龍城砦という場所を生かしたアクションの見せ方が本当に面白かった。狭い通路での格闘、複雑に曲がりくねった通路での逃走しながらの格闘、隣接する棟の壁や屋根のひさしをフル活用したパルクール、窓を使ったショートカット、あのロケーションで見せて欲しいアクションてんこ盛り。
まあ、他の人たちがギリギリのところで「超人的な身体能力」とか「超人的な格闘技術」の範疇に収まってる中で、王九の硬化気功はちょっと強さのレベルがファンタジーすぎやしないかとは正直ちょっと思うところはありましたけど。だってあいつどう見たって大ボスのサモハンより強いし……でも気功ならしょうがないか。

最後に「こんな男たちの仁義と友情の話が観たかった!」
陳が九龍城砦に逃げ込んでから、彼が次第に城砦の住人達と打ち解けていって、九龍城砦を自分の居場所として大切なものに感じるようになる。
今作にはカンフーアクション映画に定番の武術の修行シークエンスはありませんが、この人間関係の変化がいわば陳の「内面的な修行シーン」になってると思うんですよね。

その中で友情を結ぶことになる信一たち若い世代のリーダー格との触れ合いで、彼らの絆を象徴する印象的なリフレインが二つあって。一つ目は麻雀。1回目に卓を囲んだ時は陳以外の3人がグルになって陳をカモにする(それも遊びなので陳も本気で怒ったりするわけではない)けど、2回目の卓ではカモにされるのは四仔。これだけで関係性が何段階にも深まっていることが分かるし、何より再会した時のあの状況でもこんな遊び方ができるっていうのがもう……さあ!

もう一つは敵の倒し方。
序盤でやった、不埒者への「俺達流の仕置き」をラストにもう一度、何倍もの力を込めて王九にお見舞いする。ここのくだり「街を泣かせる悪党」を、しかも”風の力を借りて”倒すっていう流れになってて、仮面ライダーWの大ファンとしても最高にテンションが上がるシーンでした。アクション監督の谷垣さんは『HIGH & LOW』を意識したって仰ってますけど、ニチアサもちょっとは意識してたりしないですか? フルタマンも出てくるし

龍兄貴を筆頭に、前の世代のじいさん達の良さとかも挙げていったらキリがないんですが、パンフレットによるとこの映画って彼らが若い時代の話を描いた前日譚と、本作の後日譚の三部作になるらしいじゃないですか。
そんなのさあ、やってくれないと困るよ!!!! 頼むよ!!!!

というわけで、どういうルートにせよこの記事に辿り着いてここまで目を通してくださった皆様もぜひ本作を観て欲しい。
それこそ『バーフバリ』の大ヒットからインド映画がシネコンでも上映される機会が明らかに増えたのと同じように、この映画が日本でも大ヒットしたって言う実績が欲しいんですよ。続編が日本でも劇場公開されるように。

お願い!!!!

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