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映画感想 #135『トラップ』

『トラップ』を観ました。

監督、脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ジョシュ・ハートネット、アリエル・ドノヒュー、サレカ・シャマラン、ヘイリー・ミルズ、アリソン・ピル、ジョナサン・ラングドン、他

クーパーは溺愛する娘ライリーのため、彼女が夢中になっている世界的歌手レディ・レイブンが出演するアリーナライブのプラチナチケットを手に入れる。クーパーとともに会場に到着したライリーは最高の席に大感激の様子だったが、クーパーはある異変に気づく。会場には異常な数の監視カメラが設置され、警察官たちが会場内外に続々と集まっているのだ。クーパーは口の軽いスタッフから、指名手配中の切り裂き魔についてのタレコミがあり、警察がライブというトラップを仕組んだという情報を聞き出す。しかし優しい父親にしか見えないクーパーこそが、その残忍な殺人鬼だった。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/102219/

作品によって当たり外れが激しいことに定評のある(?)シャマラン映画ですが、今回はかなり面白かったと思います。前作が割と観念的な部分が多くて個人的にはあまり乗れなかったっていうのもあって、今作のシンプルな筋立ても楽しかったですし、「やっぱりヒッチコック大好きなんだなーこの人!」っていうどストレートなヒッチコック風スリラーなのも良くて。

ものすごーく古典的なカメラアングルなのにどこか気味が悪くて、左右のパンとか遠景からアップの切り返しで視線誘導する絵作りとか、あとは様子がおかしい人を画面の中央にぽつんと置いたりするのとかめちゃくちゃヒッチコックですよね。

主人公にして殺人鬼のジョシュ・ハートネットのサイコパシーな演技も最初から最後までずっと良かった。話の展開上、常に追い詰められてて絶対絶命なのに、その場その場の機転で(他人の犠牲も厭わずに)切り抜けていくのが悪人ながらに鮮やかで。それでいて、恐ろしく頭が切れる奴だっていうのと同時に変な奴だっていうのが滲み出てくるところにユーモアもあるんですよ。

笑っちゃったのはクーパーとライリーがいる席のすぐ横からコンサートのサプライズゲストが出てきた時。せり上がった床の奥に梯子と通路がちらっと見えてて、そこから脱出できるんじゃないか? って考えるシーン。
コンサートの真っ最中なのに「あそこに梯子があるぞ~。楽屋に繋がってるかもしれないから降りて確かめてみないか~?」って言い出して、ライリーに「はぁ?」って呆れられるくだり最高でしたよ。

あとシャマランの映画にはよく出てくるイメージのある「話の通じない中年」。今回もかなーり強烈なのが出てましたね。出番の量に対して物語的な重要度は正直そこまでなかったと思いますけど、あの人とクーパーが会話する時の、喋ってる側の顔を真正面から捉えたアングルを交互に切り替える映し方もなんか気味悪くて良かった。

中盤あたりまでは面白いけど終盤にかけてどんどん大雑把になっていくというか、後から考えたら「話の畳み方もうちょっとなんとかなったんじゃない?」ってなってしまう、これまたシャマランの映画にありがちな惜しさが今作にもないわけではないです。
一つにはクーパーが危機を脱するやり方がどんどん「いやそれはさすがに無理があるのでは?」って感じになっていくところ。特に群衆と警官隊に囲まれたリムジンの中から姿を消す方法とか非対称対戦ゲームのキラーみたいな
ほとんど瞬間移動かって感じになってましたし。

そもそも”ブッチャー”は12人も殺してるのにいまだに捕まってなくて、クーパーがスタジアムの中で色々やっていく中で確信した通り、まだ素性すら割れてないんですよね。なのにあのコンサートに来るってことだけがバレている。それって情報の漏れ方がおかしくない? って疑問がシナリオの構造上最初からずっとつきまとうんですよ。で、クーパー=ブッチャー(なのではないか)って情報をタレコミしたのが誰だったのかは終盤に種明かしされるわけなんですけど、いやあなたがそれ言えるんだったら今までずっとやってた「コンサート会場を巨大な罠にして捕まえる」って段取り自体がそもそも最初から要らなかったんじゃないか……? って人物なんですよね……

ただ今作に関してはそういう粗もひとつの可愛げになってしまってるというか、それ以上に「この次どうなるの?」「そんでこの次は?」ってぐいぐいと引き込んでいくパワーのほうが強かったかと思います。
あとやっぱりジョシュ・ハートネットのキャラクターちからの強さ。
ブルース・ウィリスが今でも健康だったら『アンブレイカブル』のデヴィッドと共演して欲しいですもん。

個人的にはシャマラン入門編としておすすめできる映画として丁度いいラインの作品が『サイン』以来ようやく出てきたなって感じもあります。
オススメ。

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