観た映画の感想 #125『犯罪都市 PUNISHMENT』
『犯罪都市 PUNISHMENT』を観ました。
犯罪都市シリーズ4作目。
僕は本作を観るために前3作を慌てて予習したニワカなのであれこれ語るのもおこがましい感じではあるんですが、今のところシリーズ最高傑作なんじゃないかと思います。いやーめっちゃくちゃ面白かった。
駆け足で完走したなりに感じるこのシリーズの魅力というものがあって、まず一つ目は言わずもがな主演のマ・ドンソクの強烈なキャラクター性。で、もう一つが意外と大事だと思ってて、それは主人公のマ・ソクト刑事が所属する捜査チームのローカルないつメン感とでも言いましょうか。
それこそ1作目の時点では地方の警察組織の割と小さなスケールの話でしたし、そこで長年培われた街の人たちやチーム内での関係性、顔見知り達の中でやいのやいのやってる感じが楽しかった。マ・ドンソクのある意味アイドル映画であるってことと、関係性が出来上がってる刑事チームものっていう両輪が犯罪都市シリーズの魅力だと思ってたわけです。
だからこそマ刑事がソウルに異動になり、チームメンバーも街のスケール感もガラッと変わってしまった3作目は個人的にはやや残念というか「あー、そういう方向に拡大路線取っちゃうのかー……」と思ってしまったんですが、4作目となる今作ではその要素がかなり戻ってきたというのがまず嬉しかったポイント。
要因は一つは単純に広域捜査隊のメンバーが3作目から続投してて、より馴染んできたってこと。特にマ刑事の「警察側の右腕」的にずっと一緒に行動してたマンジェ刑事役のキム・ミンジェさんの馴染みっぷりが本当に素晴らしかった。この人も勿論3作目から新登場のキャラクターですけど、1作目からずっといた感じすらある。
もう一つはやっぱり「警察じゃない側の右腕(笑)」、チャン・イスが2作目ぶりに復帰したことですね。今作の彼はもう完全に鬼太郎でいうところのねずみ男の立ち位置なんですよね。小悪党で、でも悪くなりすぎないギリギリの善性も持ち合わせていて、味方になってくれるけど調子にも乗るからヒドい目に遭ってもそれほど心が痛まないっていう。見た目もどんどん胡散臭くなっていってるし。
その一方、敵サイドの魅力もシリーズで最も突き抜けてたと思います。
マ刑事が建前上はパワータイプなので敵はスピードタイプになりがちですけど、今作のペク・チャンギはスピードに加えてナイフ捌きの正確性と常に光のない目が技術を持った殺人マシン感たっぷりで良かったですし、それとペクの副官がボクシングスタイルの敵なのがまた良いんですよ。それだけでマ刑事とのタイマン勝負あるでしょ! って期待感が高まるし。
イ・ドンフィさんが演じてたカジノオーナーの小物っぷりも本当に印象的で良かったなー。どの場面でもすごいちぐはぐなファッションで成金っぽさも満点だし、死亡フラグをもうサービス過剰なくらい盛りに盛ってくれるんですよ。
ペクを呼びつけて打ち合わせする場面でのペクを舐めきってる口のきき方といい、不満を爆発させる寸前のペクの内心にも全く気付いていない見通しの甘さといい、そしてその流れで何かのロックを解除するために指紋認証式のキーを操作するカットがこれ見よがしに入る。この流れでそんなシーン見せられた日にはもう絶対コイツ手首か指切り落とされて死ぬしかないじゃないですか!
で、こういう敵と戦う時にマ刑事のワンマンになりすぎないところがこのシリーズの刑事ものとしての良さだとも思うんですよね。ちゃんと捜査チームで対策を練って、特殊な知識や技能が必要ならそういう人に協力を仰ぐ。要するに組織VS組織の攻防もしっかり見せてくれるんですよ。(ここがマ・ソクト刑事と『イコライザー』のロバート・マッコールさんとの最大の違い)
シリーズが進んで犯罪の規模も大きくなってるので、このシークエンスも必然的に大がかりで派手になってるのは拡大路線が進んで良かった点だと思います。
あとは今回はマ刑事と被害者家族との関係に前作までよりも強い因縁が結ばれてたので、ひるがえってマ刑事の犯罪組織への憤りもより強くなってましたし、クライマックスでの観客の溜飲もよりスッキリと下がるようになっていて、ドラマパートも隙がないと思いましたね。
現時点で8作目までの構想はできてるらしいですが、そんなこと言わずにあと100作くらいは作って欲しい。ほんとに。