観た映画の感想 #39『MEMORY メモリー』
『MEMORY メモリー』を観ました。
みんな大好きリーアム・ニーソン映画の最新作だヤッター!
僕のnoteだと前に『ブラックライト』の感想でも似たようなことを言ってるんですが、『96時間』以降すっかりB級アクション映画おじさんみたいなイメージが浸透しちゃってますけど、リーアム・ニーソンって元々は高い演技力のほうを評価されてた俳優だったわけで、その演技力から生み出されるキャラクターの深みが作品のクオリティを高めてるっていうところが確実にある。そこが他のアクション俳優とは一線を画してる部分であって、”リーアム・ニーソンがやるアクション映画”のブランド力でもあるわけですよ。
なんですが、今作では『96時間』以降のアクション俳優としての一面よりもむしろ従来の演技派俳優としての一面が明らかに比重が高い。『96時間』が”演技も上手いアクション俳優”ってバランスだとしたら今作は”アクションもできる演技派俳優”って感じ。
それを象徴しているのが、リーアム・ニーソンが演じるアレックスが、アルツハイマーを患っている兄が入居してる施設を訪れる物語序盤のシーン。この時点ではアレックスも自身に記憶障害が出始めていることを知っているけど、病状が進行してもうまともに言葉も発せなくなっている兄を見るアレックスの表情に兄への想いとか「やがてこうなる近い将来の自分」を重ねるものすごい複雑な感情が込められてるわけですよ。ここだけでもう「いやぁー演技が上手い!!」ってなる。こういうのはセガールとかシュワちゃんのアクション映画では絶対に出てこない味わいだし、何度も言うようにこういうところにこそ「リーアム・ニーソンがやるアクション映画」の独自色がある。
アレックスが腕利きだけど高齢でアルツハイマーを発症してる、言ってみればものすごい弱体化を受けてる状態っていうのもあってアクションシーンの数とか派手さは抑えめだけど、そのぶん「死角から飛び出して一気に仕留める」とか「ものすごいスピードの手わざで一気に圧倒する」みたいな、リーアム・ニーソンのアクションの特色と言える瞬発力重視の一撃必殺型アクションに肉体の衰えを卓越した技術でカバーする老練さみたいな意味合いも加味されているような気がします。
あまり派手にカメラを動かさないのも好きで、映画全体のつくりが硬派なクライムサスペンスなのもいい。ガイ・ピアースにああいう感じの疲れ切ってて、でもまだ意地で立ってる感じの枯れたおっさんの役が似合うっていうのも個人的には意外でした。アイアンマン3の異様にギラギラしたヴィランの印象が強かったので……
ただ少し鼻につくところもいくつかあって、例えばアレックスが人身売買組織の手がかりを得た時、忘れないように自分の腕に直接メモしてるんですけど、よりにもよってガイ・ピアースが出てる映画でそれはあまりにも『メメント』そのまんますぎやしませんかと。
あとはアレックスが立ち寄ったバーで隣のカウンターにいる女性が注文したのがウォッカ・マティーニだったり。いやまあ確かにマーティン・キャンベル監督の代表作に007はありますけど、それはちょっとオマージュがあけすけすぎやしませんかと。あと監督自身は直接関わってないとはいえモニカ・ベルッチだって『スペクター』でボンドガールやってますし。
ただ、この座組で観たいものはあらかた見せてもらえる映画だったし、こういう堅実なつくりの映画こそ映画館で上映されて欲しい。リーアム・ニーソンのアクション映画は『96時間』と『スノー・ロワイヤル』が個人的に好きな2トップだったんですが、本作を加えて3トップにしてもいいなと思える一作でした。
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