観た映画の感想 #65『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』
『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』を観ました。
とんでもないクオリティでアニメ映画のレベルを一気に引き上げた映画といったらここ数年では間違いなく『スパイダーバース』だと思うんですけど、それとはまた違った方向性でアニメ映画のクオリティ水準を一気に引き上げてしまったなあ……という印象でした。
とにかく画面の情報量が凄まじく多いのはスパイダーバースと同じなんですけど、こちらはラフ画がそのまま動いてるみたいな良い意味での生々しさがあるんです。色の塗り方も子供が初めて筆を使って塗ったみたいにベタッとした質感で、トーンも整ってないし、キャラクターのデザインもどこか不格好というか、やっぱり整ってない。それなのに絵としてものすごく魅力的。パンフレットのプロダクションノートにもはっきり言及があるんですけど、この「味」は明確に狙って作ってるんですよね。アニメーターに「下手くそに描け!」って言い続けてたという(笑)
なんでそんなことしてたかっていうと、今回のタートルズは明確にティーンエイジャーだってことを前面に打ち出してるから。ていうかそもそもタートルズの正式名称ってティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズなんですよね。僕も忘れかけてたけど!
今回の、子どものラクガキみたいな画風がこのティーンエイジ感、もっと言うと背伸びしたい盛りのクソガキ感にぴったりハマってて本当に楽しい。アニメ映画だっつってんのにタートルズ達が観てるテレビに無造作に実写映画が挿入されたり、クリス・エヴァンスとかの等身大パネルが出てくるのもクソコラ子供のイタズラっぽくて良かった。
タートルズの育ての親で師匠のスプリンターも勿論出てくるわけですけど、今回のスプリンターは歴代の中でもかなり過保護なんですよね。外の世界に興味津々なのに親が過保護で下水道の世界からなかなか飛び出していけない……って時に出会うヴィラン達と意気投合しちゃうのも、不良の先輩にちょっと憧れちゃうというわんぱく盛りあるある。
そういう子どもが世界の広さを知って、少しだけ大人に近づく。
っていう青春ものの王道ストーリーにシナリオが乗っていく流れで、今作のラスボスと戦う時にニューヨークの市民たちが手を貸してくれるというのも熱かった。個人的にはアンドリュー・ガーフィールド版のアメイジングスパイダーマン1作目を思い出す展開でしたね。アメスパが本当に好きなので……
ただ、そのラスボスたるスーパーフライの扱いについては少々不満も残りました。他のヴィラン達は最終的に和解して下水道で楽しくやってるのに、スーパーフライはヴィランの悪要素とか悲哀を一人で全部背負わされたまま退場しちゃうじゃないですか。オープニングで描かれてた誕生の経緯を見れば分かる通り、あいつとタートルズは完全にコインの裏表というか、スプリンターに出会えなかったIFのタートルズの姿なんですよ。それなのにちょっとあれは……ねえ、いくらなんでも可哀想すぎません? ビーバップ達を一人前のミュータントに育てたのだってあいつなんですよ!?
ただミュータント化する前のハエとして(?)回収されてたっぽいし、続編も決まってるみたいだし、出番はまたあると思うんですよね。バクスター博士は残念ながら死んでしまったので、シンシアさんがハエ女になるんじゃないかなーと予想してるんですがどうでしょう?