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観た映画の感想 #14『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観ました。
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経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ! カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!
(公式サイトより)
最初にまず言っておかなきゃならないんですが、ダニエルズ監督のギャグというか笑わせのセンスは個人的にはちょっと合わないなーと思いました。『スイス・アーミー・マン』も割とそういうところあったと思うんですけど、ケツから何か出しておけばくだらなくて面白いだろうみたいな……敵が下半身丸出しでカンフーしてたりとか、マルチバースジャンプ酔い(?)したエヴリンが異常に長いゲロ吐いたりとか、なんか小学生が考えたギャグみたいで……(※個人の感想です)
じゃあこの映画ダメだったのかって言われると実はそんなことなくて、観終わった後は妙にスッキリとした気分になったんですよね。大量の情報にドバーッと押し流されて、気づいたら脳みそが綺麗に洗われてた感じと言ったらいいんでしょうか。
確かに設定も絵作りも突飛だし、最初に言ったようなお下劣なギャグも盛り盛りではあるんですけど、一方でエヴリンとその家族たちが抱えている不安とかトラブル……父親が理解してくれないだとか夫婦間のコミュニケーションが上手く行ってないだとか自身のセクシャリティについてだったり、あるいは移民としての肩身の狭さみたいなものってものすごく現実的かつ地に足のついた描写をされていましたね。
エヴリンの「あの時ああしていれば(又はしていなければ)」っていう後悔だって人間生きてたら誰だって一度ならずとも思うことでしょうし、ましてや「別の宇宙で”そう”なった自分」というイフを実際に体験しちゃってるわけですからね。あれ人によってはかなりズシンとくるんじゃないかなあ……
(僕はめちゃくちゃ食らいました)
マルチバースという無限の世界を舞台に果てしないスケールに物語が広がっていき、どれだけの力を得てハイパー無敵の存在になろうとも、結局人と人との間に生まれたわだかまりを溶かすのは顔と顔を突き合わせた真摯なやり取り、っていうオチのつけ方はすごく優しい結末だったなって思います。
トゥイッターを見れば承認欲求だのよく分からない不満だのを無限大に膨らませてあらゆる方向に唾を吐きまくってるような人がわんさかいるこの現代では特にね……
(そういう流れの中にSMプレイのMのほうの人を”調教”して救ってあげるくだりが入ってたりするところが個人的には小癪~~~!と思ったりもするのだけれども)
略称のハッシュタグ(#映画エブエブ)をプッシュしたり本予告も割と明るさを前面に出したような作りになってたり、
A24の映画としては初めてなんじゃないかってくらいポップな宣伝の仕方してるなーと思ってみてたんですけど、実際(少なくとも観たことがある中では)A24が手掛けた作品の中でもエンタメに寄った一本になってるはず。
というわけで、みんなも観よう。