観た映画の感想 #124『ヒットマン』
『ヒットマン』を観ました。
飛ぶ鳥を落とす勢いのグレン・パウエルの新作。
今回は脚本も共同執筆してますけど、演じる以外の映画製作のプロセスにもガッチリと関わるようになるってなるともう本当に未来のトム・クルーズみたいな大スターになっちゃうかもしれないなあ。現状やってないのは死ぬスレスレのアクションシーンくらいじゃないかな
で、映画の中身なんですけど、思ってたのとはちょっと違う映画だったなというのが正直な感想です。
前半から中盤にかけては思ってた通りの映画だったんですよ。
「警察の現場仕事に関しては素人の大学教授が、殺し屋のふりをして依頼人から殺人教唆の言質を取る」っていうハチャメチャな作戦を、事実は小説よりも奇なり、を地で行くような「そんな無茶な作戦がそんなに上手くいき続けることある!?」ってテンポで次々に成功させていく。
いろんなタイプの殺し屋をてきぱきと演じていくグレン・パウエルがまた楽しそうなのも良くて、それぞれの殺し屋にうっすら元ネタがあるのも映画オタクっぽさが出てて。『ノー・カントリー』のアントン・シガーっぽい人と『アメリカン・サイコ』のパトリック・ベイトマンっぽい人は観てる時に「この殺し屋、あの映画のアレっぽいなー!」と思ったけど、それ以外の殺し屋役にも元ネタあったのかしら。
後で分かることですけど、この映画は要するに「裏の顔を表の顔にしちゃった人」の話なので、ここで主人公が殺し屋ロールプレイを楽しんでやってるっていうのは後々の伏線にもなってるんですよね。
こんなこといつまでも上手く続くわけないよなぁ……っていうのは普通に考えても作中の展開から推測してもなんとなく分かるんですけど、中盤以降どんどん様子がおかしくなっていって、主人公の立場も最初は犯罪者を追い詰める側だったのが自分が追い詰められる側に逆転する。ジャンルもブラックめなコメディだったのがだんだんピカレスクロマンっぽくなっていくんですけど、個人的にはその展開にいまいち乗り切れなくて。
理由はいくつかあるんですけど、まず一つには主人公が迂闊すぎること。
おとり捜査のターゲットだったはずの女性に恋してしまって関係を持つ、って言う展開自体はまあ犯罪もののコメディならありがちな展開と言えなくもないと思うんですけど、ちょっと浮かれすぎなんですよね(笑)
だってその女性が住んでるのは当然自分たちの管轄の街だから他の捜査員も普通にいるわけで、そんなところで呑気にデートなんか繰り返してたらいつかバレるのは当たり前だろっていう。
で、そうなった時に主人公と女性が取った行動が「えっ、ちょっと……」っていうものだったのが本作にいまいち乗れなかった最大の理由。
主人公たちの関係を知ってしまった同僚を最終的に殺して口封じしてしまうわけですけど、実在の人物の実際のエピソードをベースにしているという体の映画でここは完全な創作なんですよ。
それは……倫理的にかなりダメなんじゃないか? しかもモデルになった人物はすでに亡くなっていて、死人に口なし状態なのに。
後半の展開だけで言うなら『バリー・シール/アメリカをはめた男』あたりの映画に少し似てるとも思ったんですけど、
あれはバリー・シールが実際に犯罪に手を染めていた人物だったのと、最終的に麻薬組織からの報復で殺されるところまでが史実なのと、あとトム・クルーズのナチュラルに過剰にエネルギッシュなところが役柄と妙にマッチしてるのが相まって(笑)結構楽しく観られる映画ではあったんです。
でもこれはちょっと……犯罪を防ぐ活動してた人物を創作エピソードで犯罪者にしちゃうっていうのはちょっと……
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