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観た映画の感想 #99『ソルトバーン』

『ソルトバーン』を観ました。

監督、脚本:エメラルド・フェネル
出演:バリー・キオガン、ジェイコブ・エロルディ、ロザムンド・パイク、リチャード・E・グラント、アリソン・オリバー、アーチー・マデクウィ、キャリー・マリガン、他

オックスフォード大学に通う学生オリバーは学内で自分の居場所を見つられずに苦労していた。そんな彼の前に、貴族のような暮らしを送る裕福な学生フェリックスが現れる。オリバーはフェリックスの一家が所有する広大な土地、ソルトバーンに招待され、そこで忘れられない夏を過ごすことになる。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/100772/


公開、というか配信自体は2023年の映画ですけど、なんやかんやで先送りにし続けて観るのがこんなに遅くなってしまいました。
もし去年のうちに観てたら2023年の年間ベストには間違いなく入れてたなー! いやー早く観ればよかった。

端的に言うなら「こういうバリー・キオガンが観たい!」の詰め合わせハッピーセットみたいな映画でした。
いささか失礼な物言いになってしまうかもしれませんが、"上手くいってる人や家庭に取り入って内側から破滅させる疫病神"をやってる時のバリー・キオガンの輝きっぷりといったらもう絶品だと思うんですよ。『聖なる鹿殺し』もそうだったし。
ヒーローとして出てる『エターナルズ』ですら彼の役どころは人の心を操る能力者だったわけで、そう考えると他人の心を揺さぶる・ざわつかせる人間の役がハマりすぎると言ってもいいかもしれません。

映画の始まり、オックスフォードに入学してきて最初の食堂でのひととき。向かいの席に座ってた学生にいきなり「君は何が得意なの? 僕は数学。何か暗算の問題出してよ。出せって言ってるだろ!!」って一方的にまくしたてられた挙句に逆ギレされるシーンからもう最高で。あのワンシーンでいかにオックスフォードがオリヴァーの肌に合わない場所かということがバシーンと叩きつけられるんですよね。
それは裏を返せばオリヴァーが長身・イケメン・金持ちというスクールカーストの頂点にいてなおかつ人間的にも気持ちのいい好青年なフィリックスへの憧れ、思慕を確固たるものにしていく動機としても機能していく。ここまでは人付き合いが苦手な引っ込み思案の青年とパーフェクト王子様の青春ものとしていい感じの映画。

ところが舞台がフィリックスの実家、ソルトバーンの邸宅(というか城)に移ってからは雲行きが怪しくなってくる。
住む世界が違いすぎる人たちのなんか浮世離れしてる会話もそうだし、元から全てを持ってる者ゆえの悪気は全くない、そもそも悪いことだという意識も全くないナチュラル他人見下し仕草とか。これお母さんが特にそういう言動が多かったですけど、ロザムンド・パイクの演技が最高でねー……『ゴーン・ガール』しかり、彼女もああいう面の皮が鉄で出来てるみたいな感じの人をやるのが本当にうまい。

で、その後しばらくしてオリヴァーがフィリックスに連れられて実家に強制サプライズ里帰りさせられる場面がくるわけですけど、そこに至っての「じゃあ今までの話はなんだったんだよ!?」っていう全く想像してなかったひっくり返し方も、親とフィリックスに挟まれたオリヴァーのいたたまれなさも本当に良くて。

ここからオリヴァーのソルトバーン乗っ取りフェイズが本格的に始まって、映画のテンポもどんどん加速していく。でも僕はそこにはオリヴァー自身の意志ってそんなになくて、割と場当たり的な疫病神ムーブだと思ってたんですけど、最後の最後にもう一つ盤面をひっくり返す特大のネタばらしがあって、そこでもう「はーーーーーーーーーーーーーーーそうだったんだ!! 最悪!! 最高!!」ってテンションになってしまいました。あんなことが出来たんだったら僕だって長回しダンスのひとつでも決めたくなる。

毒気のあるコメディとかピカレスクロマンが好きだったら絶対に気に入る映画だと思うんですけど、ただ一つ難があるとしたら潔癖症の人には少々キツそうな場面が二箇所ほどあるってことでしょうか。お姉ちゃんと良い雰囲気になってる時にとあるものをペロペロするシーンとか、お風呂でとあるものを啜るシーンとか……特に風呂のアレは……

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