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映画感想 #142『バーン・クルア 凶愛の家』

『バーン・クルア 凶愛の家』を観ました。

監督:ソーポン・サクダピシット
脚本・ソーポン・サクダピシット、タニーダ・ハンタウィーワッタナー
出演:ニッター・ジラヤンユン、スコラワット・カナロス、ペンパック・シリクン、他

夫クウィンや7歳の娘インと3人で暮らす女性ニン。一家は経済的理由からマンションに引っ越し、住んでいたコンドミニアムを元医師ラトリーとその40歳の娘ヌッチに貸し出すことに。その後、クウィンが次第に奇妙な行動を取るようになり、不安に感じたニンはその理由を探り始める。やがてニンは、クウィンが毎朝午前4時に外出していること、そして彼にヌッチと同じデザインの三角形のタトゥーがあることを突き止める。
実はラトリーとヌッチはカルト集団のメンバーで、クウィンも彼女たちからある見返りを得ることを引き換えに入団してしまっていた。娘インが邪悪な力に狙われていることに気づいたニンは、どうにか彼女を守るべく立ち向かうが……。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/102036/

映画でも『女神の継承』とか面白かったですし、ゲーム実況動画を見てるとインディーズゲームの世界でもクオリティの高い作品が結構ある、実はホラーが盛んな国らしいタイ。そこで大ヒットした映画がこちら。

いやーかなり満足度の高いホラー映画でしたね!
まず、不穏さ、恐怖感を畳みかけてくるテンポが非常に良い。
まだ始まったばかりなのにそんなに飛ばして大丈夫!? ってくらいに次々と怖いことが起きるんですよ。なぜかというと主人公のニンさんが割と行動力のある人物だからで、身の回りで起きる奇妙な出来事、例えば娘のインが誰もいないはずの空間に誰かがいると言うとかクローゼットの扉とかハンガーにかけてある服が勝手に動くとかいうことにも結構果敢に立ち向かっていく。
夫のクウィンがおかしな行動をし始めてからの追求も早くて、例えば『ヘレディタリー』だと本編の後半過ぎたあたりでようやく気づくような”敵”の存在にも本編の三分の一くらいの段階で辿り着いちゃうんですよ。

恐怖演出に関しては、Jホラー的な演出を中心に「あの映画のアレっぽいなー!」っていうのが多くてよく言えばオマージュたっぷり、悪く言えば真新しくはないという感じではありましたけど、でもテンポよく畳みかけてくる中でも緩急のつけ方が上手くて見ていて飽きませんでしたし、特に鏡とか窓の反射を利用した演出が秀逸だと思いました。
ニンさんが超常的な力で身動きを封じられたり宙に浮かされたりした後、カメラを横に動かしてガラスに反射しているニンさんとそこに映りこんでいる「何か」を改めて見せることでなぜニンさんがそんな状態になっているのかを明かすシーンとか、ジョジョのスタンドバトルをホラー映画の文脈で見せてるみたいですごく新鮮でした。

その一方でこの映画、構成はちょっと捻りが効いたつくりにもなっていて、概ね綺麗な三幕構成の序盤がニンさんのパート、その次が時間を大きく遡ってクウィンの過去から現在に至るまでのパートになるんですね。

ニンさんのパートは先に述べた通り怖いことがテンポよく次々と起こるんですが、同時に伏線めいたものも次々とばらまいていて、それがクウィンのパートで一気に回収されていく。例えば、なぜクウィンは今住んでいるコンドミニアムを貸し出すことに乗り気じゃなかったのか、なのになぜ一度会っただけのラトリーにはすんなり家を貸すことにしたのか。
「それはそう思ってしまうのも無理ないよなあ……」となる真相が明らかになって、それまでは「狂気に堕ちてしまった人」に見えていたクウィンが一気に「取り込まれてしまった被害者」になる。
登場人物の視点を切り替えることでまるで違った話になっていくホラー、『来る』なんかもそういう作品でしたけど、これも見せ方が上手い。

三幕目の最後は勿論ニンさんと黒幕であるラトリーとの対決パートになるわけですけど、その前に更に時間を遡ってラトリー側の真相もチラッと見せてくれるあたりサービスが良いんですよねー!

結末はホラー、特に子供が巻き込まれる系の作品だとかなりビターなエンディングだと思うんですが、全く救いがないわけじゃない塩梅も個人的には好みでした。『女神の継承』もかなり救いのない終わり方でしたけど、タイのホラーってああいうのが多いんでしょうか。

今年観たホラー映画の中では『サユリ』と並んで(強烈な老婆が出てくるという点も共通している)トップクラスに好きな作品でしたが、惜しむらくはパンフレットがないことですね。実際にあった事件に着想を得た映画らしいんですが、それならばその辺の解説もあればより楽しめたでしょうし、出演俳優の方々の情報もあまり分からなかったんですよね……

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