映画感想 #156『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』を観ました。
今月一番楽しみにしていた新作ホラー映画。
事前に「ジャンプスケアなし」を売りの一つにした宣伝が結構打たれてたと思うんですが、観た印象だとそれは七割方正しいっていう感じです。
確かに急にでかい音をバーンて鳴らす恐怖演出はないんですけど、音で驚かせる演出は結構、それもかなり効果的に使われてるんですよね。何度も印象的に鳴らされる熊よけの鈴の音だったり、誰も触ってないはずのテレビがひとりでにつく時のブゥン……って音だったり、電話での会話中に一瞬だけ聞こえるノイズだったり。あとは音が全くない状態が逆に怖い場面もかなりあって、基本のボリュームをめちゃくちゃ絞ってるから小さい音でも十分怖いっていう味付け。
とにかく観ている間ずっと安心できない映画でした。
上述の通り派手な演出はないんですけど、その代わりに不穏で満たされた空気の中に飛び込んでひたすら我慢する2時間というか。
視覚的な恐怖演出も、途中に一回だけある直接的な幽霊出現描写以外はなんとなく観てると見逃しかねないアハ体験みたいな演出が多くて、でも映画自体が画面に食い入るように集中して観ることをなかば強いられるような作りになってるので、否が応でも気づいてしまうようになってるんですよ。
最初に敬太の実家を訪ねた時、窓から入ってきた光が司の頭の上にかかっていて、空気の対流で埃が舞っているように見えていたと思ったら黒いもやみたいなものが司に降り注いでる絵に変わってたりとか、司がもう一度敬太の実家に行った後で久住記者と電話している時、後ろにある家の窓に人影が少しずつ浮かび上がってきたりとか。
あと民宿で祖母の話を聞かせてくれる人があまり慣れてない感じなのも良かった。敬太の母親が突然送ってきたビデオを観る、というファウンドフッテージものの部分と、弟失踪の真相を探る現在のパートの間に彼がいる感じとでも言ったらいいんでしょうか。
例の廃墟で久住記者の腕を掴んだのは誰だったのか、とか、弟は結局何のせいでどうなったのかとか、核心に近い部分ほど観客の想像に委ねるのも往年のJホラー感があって僕は嫌いじゃないです。多分こういうことだったんじゃないかなあという予想は2つほどあるんですが、ここでは述べないことにします。
余談ですが、こういうファウンドフッテージもののホラー映画を観るたびに「いやでもVHSの映像ってもうちょっと綺麗じゃなかったっけ……? いくらなんでも画質ガビガビにしすぎじゃない?」って思ってて、今作を観た時もそうだったんですが、パンフレットによるとこの映画には実際にビデオテープを使って撮影された映像が使用されているとのこと。もうちょっと綺麗だと思ってたのは僕の思い出補正だったみたいです。