映画感想 #137『十一人の賊軍』
『十一人の賊軍』を観ました。
不勉強ゆえに戊辰戦争といったら会津藩の知識くらいしかなかったもので、今作の新発田藩のようにものすごい難しい立場にいた藩があったっていうことも知りませんでした。
とはいえ戊辰戦争。
観たタイミング的にどうしても侍タイムスリッパーの高坂さんが本来生きていたはずの時代と場所(地理的な意味ではなく「こういう戦場があったご時世」という意味で)の話として観てしまう部分もあって、そういう意味でのしんどさもあり。
山田孝之さん演じる駕籠政が投獄されてから砦護衛の任務に駆り出されるまで、駕籠政含めた隊のメンバーがとにかくもう底辺も底辺、顧みられることのない奴らばかりなんですよね。そういう奴らの決死行としての面白さはありました。
キャストの皆さんみんな上手かったんですけど、やはり仲野太賀さんが頭ひとつ抜けてたように思います。台詞の演技も良かったし、あと殺陣の説得力が凄かった。パンフレット読むと本格的な殺陣をやるのは今回が初めてだったみたいなんですが、それが信じられないくらい素晴らしかった。
それ以外だと鞘師里保さんが特に印象に残りました。
捨て鉢になってる駕籠政を少しずつ解きほぐして、生き残るほうに目を向けさせていくやり取り素敵でした。
あと千原せいじさんの絶妙な生臭坊主感。
ただ決死隊サイドがいい味のキャラ揃いなだけに各自もう少し掘り下げがあっても良かったかなーとは思います。この映画150分くらいあるんですけど、都合3回ほどある砦の攻防戦がほとんど同じ絵面なんですよね。新政府軍は大砲で狙撃してくる、決死隊は砲撃をなんとかしつつ爆弾で反撃する、そして山田孝之は隙を見て脱走を企てる。
なので、アクションで同じこと続けるんだったらその分を人間サイドの描写に回しても良かったんじゃないかなーっていうのは個人的な好みの部分。
あと下層階級の人たちなのにみんな歯が綺麗で浮いてるとか、そういうディテールはもうちょっとこだわって欲しかった気持ちもあり。
『侍タイムスリッパー』で時代劇いいじゃん! って初めて思ったような人が次に観るものとしては結構ハードル高めだとは思いますが、これも現時点での東映時代劇の一つの手本。これは応援したくなりますよねえ。