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映画感想 #154『嗤う蟲』

『嗤う蟲』を観ました。

監督:城定秀夫
脚本:内藤瑛亮、城定秀夫
出演:深川麻衣、若葉竜也、松浦祐也、片岡礼子、中山功太、杉田かおる、田口トモロヲ、他

田舎での暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈は、脱サラした夫・輝道とともに麻宮村に移住する。自治会長の田久保のことを過剰なまでに信奉し、過剰なまでにお節介を焼く村民たちに辟易しながらも、2人は新天地でのスローライフを満喫する。そんな中、村民の中に田久保を畏怖する者たちがいることを知った杏奈は、次第に不信感を抱くようになっていく。一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、 麻宮村の隠された「掟」の存在を知ってしまう。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/102254/

最近は年に何本かは必ずある印象のある村ホラー。

個人的にはこういう作品群を指して「因習村」って言うのはあまり好きじゃないんですが、今作はそういういわゆる因習村ホラーとはテイストがちょっと違うと思うんですね。

確かに知り合って早々に子供はまだかってしつこく聞いてくるとか身体的な距離の詰め方が図々しいとか中盤以降の露骨すぎる村八分描写とか、他の田舎ホラーでも定番の嫌な描写はあるにはある。でもこれはあくまでパブリックイメージとしての「田舎の嫌なところ」であって、これ自体に何か特別な理屈があるわけではないんですよね。

中盤に明かされる村の「掟」に関しても、昔から村で続いてた産業なのは事実で、それが変容してしまったのは(田久保の言い分を信じるなら)土砂崩れで村の人口が大きく減ってしまったから。なので、因習村というよりは村人たち自身もカルマの中に囚われてしまってるんだと思うんですよ。

田久保も普段は恐怖政治じみたやり方で村を実質的に支配してはいるけども、三橋に撃たれた時は本気で狼狽えてたあたり、ああいう役割をこなしていくうちにロールに飲み込まれていった普通の人っぽい。むしろ、表向きは村人にいじめられている三橋が家の中では更に立場の弱い奥さんに強権的に振舞っていたっていう事実のほうがスリラー的には怖かった。三橋の死は輝道たちを村のルールに絡めとる為に利用されるのに対して、奥さんの自殺は何事もなかったかのようにスルーされちゃうところも。

そんな田久保役の田口トモロヲさん、本当に怖くて良かったです。
顔立ちがどことなく似てるのもあって『ブラック・フォン』でイーサン・ホークがやってた仮面の殺人鬼みたいな印象を受けたんですけど、あっちは仮面かぶってるのに対してこっちは素顔であの表情ですし。

ポスターアートも似ている

あとは深川麻衣さん。
この手のホラーで重要なのは追い詰められていった際のやつれ具合と、そこから反転攻勢に出る際の覚悟の決まり具合だと個人的に思っていて、そのどちらもかなり僕好みの良い目をしていました。

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