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魔女の宅急便(1989年)

魔女の宅急便(1989年)

 「大切なのは心よ」
 「心の方は任せといて。お見せできなくて残念だわ」
 これは宮崎版「星の王子さま」ということなのかもしれません。
 冒頭から箒は二つ出てきて(キキが用意していた箒と、母が用意していた箒)、その後も似ているようで似てないもの、似てないようで似ているものの対比によって物語が進んでいきます。

 初期の宮崎作品の得意技である、このあとのシーンを予兆させる前フリ。
 たとえばカリオス

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ポケットモンスターリコとロイの旅立ち「はじまりのペンダント前編・後編」 序文

ポケットモンスターリコとロイの旅立ち「はじまりのペンダント前編・後編」 序文

 浦沢メソッド、というものをご存知でしょうか。物語を途中まで描いてその階段の最後の段をまた別の階段の一段目にしていく、という物語展開の手法です。これは「Monster」や「20世紀少年」で使われている手法で、「BILLYBAT」ではわかりやすく前面化した形で使われています。
 一話目(はじまりのペンダント 前編)を観た時に思ったことはこの手法で、さらにこれと似た手法を先鋭化させて使ったことでアニメ

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女医の愛欲日記(1973年)

 本当かどうかわからないですけど、Xで蓮實重彦が戦後の百本の内の一つに選んでいると言っている人がいたので観なければ、と劇場へ。個人的には大収穫でした。だってこれ、ゼロ年代のエロゲみたいじゃないですか。あの注射器は何。人類最後のヤギって何。そして、それらはその部分だけで浮いてるのは何。
 もしゼロ年代の有象無象のエロゲの中から適当に一本選んで40代以上の出演者で実写化すると、この作品になると思います

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クラユカバ 作家性+省略=映画であること

クラユカバ 作家性+省略=映画であること

 クラユカバは映画的な場面が土に植って芽を出していて、根本的に僕が映画に求めているものが観れました。近年の中では、とても作家性のある作品です。
 良い映画とは何なのか、と業界が迷走し続けるのは良いプロデューサーがいないからであり、その良いというのは映画に理解のあるプロデューサーがいないという意味ですが、ではいったい何を理解していないのかと言えば、良い映画というのは作家性のこと、であることを理解して

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