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定石とその作成方法


本記事について

概念が曖昧になりがちな勉強という文脈についての定石について説明し、具体的な作成方法が全然語られない定石の作成方法について説明していきます。

※本記事は入試数学の勉強法の記事で扱った内容を加筆修正したものです。この記事の執筆にあたってあちらも少し変更しています。入試数学の勉強法の記事が重く、軽量化を目的にこの記事を作成したので、もともとの記事は消す予定でしたが、話の流れがわかりにくくなると思い一旦そのままにしています。

定石という概念は試験という場で安定性を確保するために、ほとんどの科目で大切な考え方です。思考色の強い単元ほど威力を発揮します。驚かれるかもしれませんが、私自身現代文や英語でも行なっています。むしろ全科目でしています。科目指導の際はそれらを提供した上で抽象化体系化のお手伝いをしています。英語や現代文だと相性が悪いと一見思いそうですが、そんなことはありませんし、苦手な科目を克服する上でかなり強力な方法だと考えています。事実現代文は一年でどうにもならないと言われていますが、定石という概念をもちいれば全然可能です。共通テストで評論15点から20点あたりウロウロしている得点帯の方も、現代文が苦手である私含めいくらでもひっくり返してきました。苦手だからこそ、センスがないことを自覚し、定石という概念に辿り着き、使い続け試行錯誤してきました。この記事で考え方を共有しておきたいと思います。
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定石は苦手科目ほど威力を発揮します。なぜなら定石とはできる人の思考そのものだからです。できる人の思考を頭にインストールすることで、できない自分をできる自分に少しずつ作り変えていきます。我流でしていくのと、定石を意識して学習していくのとでは、習熟のスピードが圧倒的に変わります。是非この記事で定石と定石の作成方法に知り、得点をのばし、安定性を確保していただきたいです。
※指導者にとっても指導力向上につながると思います。

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テーマ毎の定石とは

具体的な作成方法について触れる前にまずは定石そのものについてです。テーマ?って何だと思われる方がいらっしゃるかもしれません。分かりやすい所でいうと問題集の問題の上の載っているタイトルのようなものです。定石とは、目の前にある問題をある思考法の一つの具体例として認識できるように、その問題に含まれるポイントを抽象化して使える形でまとめ直したものになります。人によっては抽象論、思考の型、思考の道具、思考の癖、思考パターン、思考の癖付け、武器、道具、ルール、ポイント、鉄則、定石、発想法、思考法、お作法と呼ばれているものです。色んな呼び方をされていますが、基本的にどれも同じものを指しています。色んな言葉で言ってしまうと混乱してしまうので、ここでは定石、思考法、ポイントという言葉で書いていきたいとと思います。使える形でいうのは、ポイントを単元毎ではなく現象ベースでテーマ毎に作り、ポイントを使う優先順位、使う場面、使い方、メリット、デメリット、注意点なども含めた形のことです。
同じ問題は二度とでませんが、似たような考え方の問題は何度も出題されます。そこで目の前の問題を解けるようになることを目標にするのではなく、目の前の問題を通して、まだ見ぬ未知の問題が解けるように抽象化し定石化して学習していく必要があります。
※目の前の物を通して先のことを考えながら、いきるように学習していくというのは、学習全体で大事な考え方です。

定石化のメリット

*安定性のアップ
→他の問題に応用させやすい形で学ぶことができ、結局いつもしている事は同じなんだという意識がつくので学習効率が圧倒的に上がります。この意識がつかないと毎回はじめましての状態なので、上手くいきません。違う問題でも、したことがある似た問題と同じように考えられるように勉強していくことが大切です。同じなんだという意識を持てるからこそ、上手にそしてそつなくできるようになります。

*知識の活用力が上がる
→知識は引き出すことこそが難しく最難なので、事前に使用場面と使い方と共に暗記しておく必要があります。要するに応用のさせ方も含めて暗記しておくのです。印象が悪くなってしまうので暗記しろと言ってくれる先生が、あまりいない(駿台、河合、代ゼミの一部の先生と鉄緑の先生ぐらい)ので、暗記しなくてもいいと誤解されがちですが、暗記しなければならないものです。ちなみによく先生方がおっしゃる、おさてえておいて、頭にいれておいて、頭に叩き込んでおいて、チェックしておいてなどはすべて暗記してという意味です。表現を変えているだけです。
※私の記事での暗記の定義について誤解ないようお願いいたします。暗記≠丸暗記です。訳もわからずお経や定期テスト前の直前のように、覚える状態は暗記とはいいません。それはただの丸暗記です。

*記憶の維持に役立つ
→あやふやな状態だったものを定石化しておくことで、はっきりとした形を持つようになるので頭の中に定着しやすく、維持しやすくなります。

*選球眼の養成につながる
→定石として押さえておくことで、模試や本番で、解ける問題、解けない問題の判断の基準になり問題の選球眼が養われていきます。無駄な時間がさけられるので、一問により効率的に時間を使えるようになります。

*思考の負担軽減につながる
→ある程度の解き方の流れが頭に事前に入っている分、思考の負担が軽くなり全体の方針が見えやすくなりゴールまで辿り着きやすくなります。今何してんだ?と迷子になりにくくなります。事実上のワーキングメモリーの拡張を意味します。

科目全体を通して暗記と聞くと直接的な知識ばかり浮かぶかもしれませんが、ここで紹介した定石を暗記することが理解科目では主であくまで前者はこれに比べるとオマケであることが多いです。勘違いしないでほしくないのですが、公式や定義、基礎知識などの直接的な知識は覚えなくてもいいということではなく、そんなことは覚えていて当然ということです。基準を上げてください。

テーマ毎の定石のように事前に知っておかないといけない知識は多数存在します。多くの受験生はその場で考えすぎです。もっと事前に準備できることはあります。

定石力のつけ方

ではこのテーマ毎の定石力をどのようにつけるのか、コツや注意点をいくつか述べていきたいと思います。私自身が実際にした方法ですし、この記事を読んで色んな方が実践していることです。再現性はあります。

自力でやったことがある方が少ないためか具体的な方法について全然語られていません。河野さんの影響で考え方自体は広まったものの、できている方自体が少ないためどうやって定石力をつけるのと聞いたとしても
・一生懸命考える
・定石があるはずというつもりで眺める
・一般化しようとする
・本質を捉える
など答えになっていないものが多いです。目的が目的のままで(  だからそれをするためにはどうすればいいんだと再度聞きたくなる回答)、動ける具体的な内容である手段まで落とし込まれていません。それでは結局何をしていいか分からず行動できないので結果に反映されません。具体性にも気を使って書きましたので、参考にしてほしいです。

予備校に通っている人は最後の微調整や自分で一部を作らないといけない場面があり必要ですので、ここで定石化について知っておいてください。上手な定石やまとめ方について数多く授業で見れるので、転用できるものが多くそこまで苦労しないと思いますが、念の為コツについて知っておいて欲しいです。
独学であれば自分でしないといけないので、より注意深く読んでください。

*問題から定石(ポイント)を抜き取る意識を持つ
→問題の解説を読む時にその解説の手順や処理を理解するだけでなく
他の似た問題で使える思考法はないかな
・よく見る流れや考え方は含まれていないかな
・その問題を初見で解くために必要な視点はなにかな
・その解答を再現する上で必要な最低限の要素はなにかな
・最初のスタートを踏み出すためにはどのような思考法を持っていればいいかな

問題を見て答えまで辿り着くにはどのような思考法をもっていればいいかな
という視点を持ち問題から思考法を抜き取ってください(この時はひとまずその問題では少なくとも成り立つように定石化する)。これを意識することで正しく必要なところを抽象化しやすくなります。
※これは問題を構造的にみる練習にもなります。

*問題の出題意図、収録意図を考える
→ズレた所を抽象化しないために、筆者、作問者がその問題を通して、学習者、受験者に何を問いたいのか、何を学んで欲しいのかという出題意図収録意図を把握しようとする姿勢が大事になってきます。問題という形式になっている以上そこには必ず聞きたいこと(出題意図)というのが存在します。その聞きたいことというのは基本は大事なこと(少なくとも出題者にとっては)なので、テーマや注意点、要するに抽象化するべき所と被っていることが殆どだからです。これらを意識し、問題を上から見れるようになることで抽象化の質が上がっていきます。
※この意識は記述でとても大事なものです。この意識がないと点になる解答が書けません。
※聞きたいことも無いのに質問する人なんていませんよね。

*自分で一から考えない
→車輪の再発明をしないために、既存の物をできるだけ基盤にして余計なステップを踏まないようにしてください。自分で一から作れるほど簡単なものではありません。すべて自分でしようとすると時間がかなりかかってしまいますし、質がどうしても低くなりがちです。
※具体的には参考書、授業、テキストを参考にしてください。特に参考になるのは授業の口頭説明です。

*まずは単元毎にいれていき、一周してからは横の視点も取り入れながら定石化していく
→いきなり横割りはできないので、まずは縦割りでいれていきます。

*修正しやすいものにまとめる
→普通のノートは修正がしにくいので、非推奨です。修正していくとボロボロになって、きたなくなってしまいます。iPadにまとめていくのが編集がしやすく理想です。それが厳しいなら大きめの単語カードがオススメです。
※パソコンやiPhoneのメモアプリなどでもいい とにかく編集がしやすいものがいい

*現象ベースで明文化する
→〜のときは、…する 〜を見たら…するなど実際に出会う形で明文化していきます。実はここが1番難しいです。本番は使う物を明示されず、自力で特定する段階(問題を見たらテーマとタイプの判別)から入るので、あまり内容毎にまとめておいても意味がありません。相加平均相乗平均の大小関係についてまとめていて、どれだけ使いこなせるようになるでしょうか。正直殆ど使いこなせないといっていいでしょう。使いこなせるようにするためには、この引き出す場面を言語化明文化して暗記していくことが大切になってきます。
※勝手に、理解しなくていいと読み替えないでくださいね。暗記≠丸暗記です。
※ただし、知識を引き出す負担、使いこなす負担が少ないもの(ex.使用場面が限られる、使う場面が分かりやすい、感覚的にしても問題ないなど)に関しては単元や内容ベースでも大丈夫です。ここは個人によってラインが変わってくるので柔軟に対応してください。

*同じ解法の問題を集めて比較する
→同じ解法の問題を集め、その問題同士の共通点に注目し、どうしたらその問題が次解けるのか考えます。まずこの段階は問題も似ているものを集めてください。共通点に注目することで定石の使用場面、使い方がわかります。問題を集めている中で、問題文は似ているのに、解き方が違う問題があれば、今度は相違点に注目してください。相違点に注目することで、使えると思っていた解法の使えない場面や、注意点がわかり、定石を使い分ける能力が上がっていきます。余裕があれば、見た目が違う問題だけど解き方が同じ物も集めてくると、さらなる理解(こういう使い方もできるんだというように)にも繋がりより定石の質が上がっていきます。見た目ではなくテーマや解法で貫通させるまとめ上げる意識が大切です。これをする時、かなり問題を比較するために見ないといけないので、素材確保のためにそれなりの冊数の問題集は必要になってきます。
※共通点や相違点はまずは構造的なものに注目することが多いです。

*できるだけ自分の言葉で説明する
→参考書やテキストの言葉のままではなく、自分の言葉で少しでも説明するように心がけてください。自分の言葉で説明しようとすると頭に負荷がかかり、理解が深まりますし、自分の言葉だからこそ知識が馴染みやすくなり暗記しやすくなります。
この時、自分が問題を解いた経験をのせる事、自分にとって分かりやすいストレートな表現で書く事(かしこまって書かない)、ニュアンスをできるだけ出す事、自分なりの解釈を載せることをを心がけてください。そうすることで自分にとって最適なものとなっていきます。
無理矢理変形するなどです。

*纏める内容は使い方に重点
→纏める時は内容そのもではなく知識の使い方を大事して纏めていきます。具体的には優先順位、使う場面、使い方、メリット、デメリット、注意点などです。知識は試験で問われる形で覚えるのが鉄則なので、これらの視点を軸に纏めていくことになります。内容自体の説明をしたい時は別枠や補足で補うようにしてください。
※問われ方を知るために頭を使いながら沢山の問題を解く必要があります。

*自分のレベルに応じて抽象度を調節する
→勉強を始めたばかりの時は使える形でまとめようと思うと具体的にまとめないといけません。抽象的に纏めてしまうと結局何をいっているのか分からず使い物にならないからです。ただ、逆に勉強が進んできたら、そこまで言われんでもわかるわー!となってくるので抽象度を上げても大丈夫になってきますし、上げないといけません。なぜなら勉強が進めば進むほど、暗記しないといけない定石の量が増えてきて、そのままの状態だと多すぎてキャパオーバーになってしまうからです。脳の負担を軽くするためにも、学習が進んできたら抽象度を上げていってください。学び始めの頃は具体的に、学びが進んだら抽象的にを意識してください。
学習が進んでくると理解が深まったり、応用問題で何度も定石に触れたりするので、意識的にしなくても勝手に頭が暗記してしまっていることが多いです。

*思考法の圧縮と体系化
→思考法が増えていくとかなり量が増えてなかなか知識として蓄えておくのが大変になってきます。もちろんそこで先程述べた抽象化をして欲しいのですが、プラスで思考法の圧縮と体系化もして欲しいのです。前の内容とできるだけ関連づけたり、似たものはどんどん纏めていくことで思考法を圧縮していきます。これをするために初めてみた定石は、すでにある定石と何か関連はないか構造や意味に注目して考えることが大切です。また、配列を工夫し、縦から切ったり、横から切ったりすることで使いやすい形に体系化していきます。これらを意識すると、より頭に入れやすくなります。
※体系化についてはこちらで詳しく扱っています。

*無闇に量は増やさない
→既に作った物で大丈夫なら、わざわざ新たに作る必要はありません。道具はできるだけ少なくが鉄則です。そうしないと、はじめましての状態からなかなか脱せずなかなか一つ一つの定石の質や習熟度が上がりません。同じものを何度も使うからこそ質や習熟度が上がっていきます。毎回初めましての状態では一向に上達しません。以前作ったやつが完璧に適用できなかったとしても、ただ微調整をするだけで問題ないというケースもあります。ただでさえ量が多いのですから無闇に量は増やさないようにしましょう。
※上手く定石を当てはめられない時は
・元の定石を微調整するだけでいいのか
・根本的に追加しないといけないのか
・抽象度を上げて適用範囲を広げればいいのか
・例外的な特殊なケースとして注意点として含めないといけないのか
などを考えなければなりません。

*使うときは全体と部分を意識して部分を選択する意識を持つ
→定石を使うときは使うものをピンポイントで考えるのではなく、関連するものを一旦全て思い浮かべて、その中から枝葉に進み根拠を持って部分を選択する意識をもってほしいです。時間を測っている場面や本番ではピンポイントで考えてもらって構いませんが、練習中は知識のアウトプットの練習と抜け漏れ確認の意味合いがあるので必ずしてください。
※この意識があると定石の定着スピードが上がります。

*一度作ってからも使いながら微調整(修正補強)をする
→問題を見たら必ず今までストックしてした定石が使えないか考えてください。使わなければ定石が本当の意味でなかなか習得できません。問題に実際に使ってみると、もっとこういうふうに纏めておけば自分が上手く使いこなせるなと言う場面に出会うと思います。そういった時に、すぐに修正を入れてその定石を自分に最適化していってください。変えてはいけないということはないです。型を一度入れているのですから、型を発展させていきましょう。守破離です。この意識がないとなかなか定石の質が上がっていかなく、汎用性の低いものになってしまいます。

*具体例が瞬時に浮かぶようにしておく
抽象は具体に落とし込んで理解するのが鉄則です。しだかって、学習初めの時こそ定石化した物の具体的な使用場面や使用する問題が瞬時に浮かぶようにしてください。そうすることで類題を見抜きやすくなり、定石を使いこなす能力が上がっていきます。
※問題集の番号を定石に添えておくといいです。


以下の動画も併せて見ていただくとより今説明した内容の理解が深まります。
ここでの説明を読んだ方であれば、動画だけ見た人よりも、動画の内容を正確に理解できると思います。
コメント欄を見ている限り正確に理解できている人が少ない気がします。


問題を解いている時の感覚について少し

これらのことを通して事前に磨き上げた準備してきた定石が、即した状況で瞬間解凍され勝手にパカパカ開いている感覚です。問題の難易度を測る一つの指標として何回開いたか(定石の個数)ではかっていたりもします。もちろんこれだけで測っているわけではありません。
・扱わらているテーマの難易度
・議論の長さ
・脱線のしやすさ
・計算量
・記述の難易度
・着想の難易度
なども難易度測定に利用しています。もちろんこれ以外にもあります。
この状態のおかげで、余計なことに頭を使わないでよく、問題の状況理解、設定理解の方にかなり頭を使えます。
脳のキャパも圧迫しないので、ケアレスミスも減ります。

読者の皆様へ

定石という概念は囲碁や将棋ではかなり有名な考えですが、勉強ではまだなかなかマイナーです。それゆえに未発達の部分も多いです。私自身よりブラッシュアップさせたいので、もっとこうしたほうがいい、ここはよくないという意見をいただけるととても助かります。

本記事のような科目横断系の記事は以下のマガジンにも含まれています。

読んでくださりありがとうございました。受験生の参考になれば幸いです。スキを押してもらえると励みになります

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