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イノセントワールド
2013年に発売されたpanpanyaさんの「足摺り水族館」に収録されている「イノセントワールド」という話に最近ハマっています
読んでいると少し泣きそうになるというか、物語の儚さがグッと来る感じがあるんですよね
なので、その話をしてみようと思います
一部ネタバレを含みます
あらすじ
修学旅行先の京都で、みんなとはぐれてしまった主人公は、スケジュールで回ることになっていた京都タワーに一足先に向かった
展望台から景色を眺めていると、あるはずのない第二の京都タワーの姿を見つけ、せっかくなので訪れてみることに...
旅行先ではぐれたことをきっかけに、京都タワーの謎を追う独特の世界観の作品になっていますが、
この作品のもう一つの特徴に、全体的にクレヨンで背景を塗りつぶしているような普段と違った作画になっている点があります
それもあり、全体的に作品から儚さを感じます
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こちらの作品は、"SF研究会"という同人サークルの冊子に収録された同人誌作品であるため、もしかしたら実験的な作風になっているのかもしれないです
儚い描写の中で物語が進んでいき、第二の京都タワーに到着するのですが、
第二の京都タワーには人が全く居なくて、受付の人にそのことを尋ねると、
「それは"第二"だからであり、はじめから第二の京都タワーは誰も必要としていなかった」と言われます
すると主人公は、展望台を眺めながら「そうか、なんかかなしいね」と呟くのですが、
このシーンにジーンと来るのです
説明を受けた時の気持ちを想像すると、やっぱり悲しいと思いますし、人の居ないタワーの哀愁感とも重なって、切なくなります
シンプルなセリフで、景色を深く表現していて、すごいな と思いました
そのあとに、「第三の京都タワーがある」というので、受付の人と車に乗り、向かうことになります
到着すると、そこは灯台で、「第三の京都タワーを計画する途中で頓挫したために灯台になった」と説明されます
灯台から景色を眺めていると、主人公は、みんなが乗っているフェリーが帰ろうとしているのを目撃するのですが、
この時に「キレイだね みんなが手を振ってる」と呟くのです
「あー!乗り遅れた!」とかではなく、みんなが行ってしまうのをすべて受け入れているようなセリフがすごく印象的ですよね
この話のタイトルは、「イノセントワールド」で、
訳すと イノセント→無垢な ワールド→世界 で、「無垢な世界」といった意味になります
作中では、「イノセントワールド」というワードは、一切登場しないのですが、
それでもどこか無垢な空気を感じ取ることが出来るのです
その一つに、第二の京都タワーが必要とされていないことを知った際の、「なんかかなしいね」というセリフや、
乗り遅れたフェリーを見て、「キレイ」「手を振ってる」という感想が最初に出てくる主人公の姿があるのではないかと思うのです
そう考えた時に、翳りがなく、思ったことをそのまま言葉に表している主人公に、懐かしい気持ちを思い出して、ジーンと来るのです
なので、「イノセントワールド」は、大人になってから分かる感情を儚く描いている作品だと、個人的に感じました
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