ゲーテ「ファウスト」第6章 【悲劇第二部】第一幕 いつわりの国:感想
こんにちは。
ゲーテのファウストを読んだ感想の第7回目になる。
今回から第二部に入る。何を風刺しているのか、示唆しているのか、なんのメタファーだか分かりにくいストーリーになっている。
思いっきり外したことを書いてるかもしれないので、笑って読んでみて。
それで、この投稿を始めたきっかけはC.G.ユングを読み漁り始めたところゲーテの「ファウスト」に高評価を与えていることがわかったからである。
読んだと言うよりは聞いたのであるが、こちらを聞いた。
目次はこのとおり。
【悲劇第2部第1幕】
第6章:いつわりの国
⭕️主な登場人物
・メフィストフェレス:誘惑の悪魔
・ファウスト:学、医学、法学、神学まで学んだ博士、先生。生きる喜びを失っている。
・風の精霊アーリエル。
・ファルツ帝国皇帝とその家臣の大臣たち
・ヘレネー:母たちの国に住む絶世の美女神
・パリス:母たちの国に住む絶世のイケメン神
⭕️あらずじ
風の精霊の施しにより、マグナレーテを失った心の痛手から回復できた。
場所は、ファルツ帝国。争いが国中で起きていて国は貧しくなってきている
恋愛以外の社会をメフィストはファウストに見せようとしている。
玉座には皇帝が座っている。総理大臣、財務大臣、国防大臣など多くが集まっている会議に参加。
メフィストは道化として出席している。
帝国にはお金がないというが、メフィストは知恵があればどこにでもお金はあると宣う。
過去の人が埋蔵していった財産を掘り当てて皇帝が接収するように提案する
皇帝は、お金を集めるようにメフィストに命じる。
作業にかかる前に、メフィストの提案で皇帝は仮面舞踏会を開催する。
仮面をつけた様々の参加者が大広間にいる。
ギリシャ神話の神々も現れる。喜びの女神、運命を司る女神、復讐の女神。
鎖に繋がれた、恐怖、希望、智慧の三人。
4頭の翼を持つ馬に馬車を引かせた少年が、
ものを持つより誰かに与えることの方が幸せと知っている人、富の神プルートスを乗せてきた。
少年は指を鳴らすだけで真珠や宝石といった財宝を振り撒く魔法を使った。周囲に大騒ぎが発生した。
富の神プルートスは、変装したファウスト。
メフィストは痩せた男に化けてプルートスの傍にいる。
プルートスは馬車から降りると、少年を帰した。少年はプルートスに幸せを授けてくれたと感謝して帰った。
ファウストは舞踏会場の大広間で宝箱を、従者に杖で突いて蓋を開けさせた。
金の冠と鎖、指輪が出てくる。溶けて膨れ上がっていく。
舞踏会の参加者は興奮して宝箱の中のものを取ろうとする。
プルートスは熱した杖を使って、参加者たちを追い払う。会場は大混乱に陥る。
バーン、それは半身山羊の神、さらに土の精霊のノーム、山の巨人ニンフたちがやってきて、バーンを取り囲んで踊り始めた。炎が吹き上がり大広間を飲み込まんとした。
プルートスが杖を叩くと、霧を連れてきて雨を降らせて火を消した。
朝日が差し込む庭園に皇帝や大臣たちがいる。そこへプルートスから変装を解いたファウストと、道化に扮したメフィストがやってくる。魔法を使った前夜の舞踏会に皇帝からは大変に満足したとの意が示された。道化に対して千夜一夜物語から出てきたような者だと評し、今後も嫌なことの多い皇帝を楽しませろと言う。
大臣と将軍から、国の借金が全て返済できて、兵隊に給料が払えるようになったと報告が入る。
借金の返済ができたのは、ファウストとメフィストのおかげと付け加えられる。「帝国内にある無数の宝が掘り出されたなら、1000クローネとこの紙を引き換えるものとするという紙」を発行していたのである。
皇帝はイカサマだと指摘するが、昨夜、皇帝がバーンになっている時に、国民を幸福にするための書類として、この紙の発行を許可する書類にサインしたと金庫番の大臣が説明する。
さっそく何千枚とこの紙を印刷して、国民に配布したことも報告された。
そして死にかけていた街が蘇り、喜びに沸き立っているとも。
皇帝は、これを渋々認めた。
メフィストはこう弁舌する。
「有り余る財産が使われもせず、帝国の地面深くじっと眠っているのです。深く物事を見ることができる偉い方々は、無限のものに無限の信用を置くものです。宝石と違ってこうした紙のお札は便利なものです。一眼で価値が分かる。慣れてしまえばこんなに便利なものはない。」
これを聞いて皇帝はようやく納得した。
皇帝はファウストとメフィストに褒美を与えられる。そして、帝国の宝を掘り出す作業をファウストとメフィストに任された他、様々な仕事を二人に命ずる。
ある日、ファウストはメフィストを呼んで、世界1の美女美男であるヘレネーとパリスを皇帝たちが見たいというので、早く連れて来いと命令する。
メフィストは、彼らが、秘密の奥底というか”母たちの国”というかにいるので行きにくいと言い訳をする。母たちとは、悪魔にその名前を口にされたくない女神たちのこと。
そこにいくには寂しく孤独な旅をしないといけないとファウストを脅すが、動ぜず行く気に揺るぎはない。ついには、ナビゲーションをしてくれる鍵をメフィストから借りることができた。
3本の足のお香立てが”母たちの国"の道標。道標にたどり着くと、日に照らされた”母たち”が見える。”母たち”には幻しか見えないので人であるファウストは見えない。このお香立てを借りた鍵で触れることで持って帰ろことができるようになるので持って帰ってくるように指示されていた。これでヘレネーやパリスを帝国に呼び寄せることができるという。
ファウストが”母たちの国”へ旅行中は、皇帝以下様々な家臣からメフィストはこき使われる。
メフィストは”母たち”に連絡して、ファウストを返してもらうようにした。
騎士の間に皇帝以下集まった者たちの前に、突然口を開いた真っ黒な穴からファウストが戻ってきた。例のお香立てを持って。
お香立てに鍵を触れると霧が発生し、霧が晴れるとパリスが現れた。次に、また霧が発生してそれが晴れるとヘレネイが現れた。
ファウストはヘレネーに一目惚れする。だが、パリスとヘレネーには周りにいる人間は目に入らないようで、ヘレネーを抱擁するパリス。ファウストはパリスからヘレネーを奪おうとする。鍵をパリスに押し付けると、二人は大爆発が起きて消えてしまった。
メフィストは、ファウストの愚行に呆れながら、ファウストを抱きかかえてその場から消えた。
⭕️感想
たかだか印刷してあるだけの紙切れに価値を見出す人間の浅ましさは現在の現実を同じですな。紙幣だけでなく国債とかに価値を認める滑稽さが劇だと浮き彫りになる。
滞留している資産や、遺産として把握されていない資産を有効に活用すれば借金の解消になると言う発想はこんな頃からあったのだね。
仮面舞踏会の最中に、皇帝からまんまと「帝国内にある無数の宝が掘り出されたなら、1000クローネとこの紙を引き換えるものとするという紙」の発行の命令書の署名を取り付けるのは、悪魔の所業。
”そして死にかけていた街が蘇り、喜びに沸き立っているとも。”と言う事態になったことは悪魔にすることは全て悪とは言えないとも言いたいのだろうか。
色恋面では、マグナレーテを失ったことも忘れて、今度はヘレネーに一目惚れするファウスト。悪魔も呆れる最低男。
美に対する文化的な違いは集団的無意識と関係があるのかChatGPTに聞いてみた。
こう答えてきた。
そんなことを見出す物語かどうかは、私にはわからない。
次回は、第7章 第二幕 古代のワルプルギスの夜
++++++++++++++++++++++++++++++++++
こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
E-mail: info@teal-coach.com
URL: https://teal-coach.com/
++++++++++++++++++++++++++++++++++