試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
本屋さんで見つけたこの本の題名に思わず手を伸ばした。
書店員さんのポップには
「恋をしている人にも、恋をしていない人にも読んで欲しい。」
そう書かれていた気がする。
「恋をしていない人にも読んで欲しい」かぁ。題名からすると恋愛の楽しい部分が思いっきり描かれているような気がして「恋をしてない人にも」というフレーズに少し引っかかったのを覚えている。
発売から1年経っており、人気作のようだったので新書ではなく、古本で探すことにした。
そう、こないだのBOOK・OFFで見つけて買ったのだ。
久しぶりの物語の文庫本に実はわくわくしていたし、読み切れるかどうか緊張もしていた。
が、すんなりと読み終えてしまった。
短編集でとても読みやすかった。
1つの話を30分弱ぐらいで読み切れる為、お昼休み、寝る前の時間で完結できる。
視点がひとり。
ほぼ自分視点のみで物語が進んでいく為、理解しやすい。
そして、服の描写がすごく素敵。写真1枚撮れば伝わる世の中で言葉で表現される洋服。素材、フリル、サイズ感、色味、、、想像していく楽しみがある。
この本には、今までひとりで悩んでいたことが書いてあって、それを言語化してぐさぐさと私に刺してくる。
それと同時に私だけじゃなかったんだという妙な安堵感があった。
しかし、言語化された言葉にはぐうの音も出なくて、抜いても返し針がついているから抜けない感じの針。
そんな痛みを感じながら読んでいくと、最後に私を救ってくれる。包み込んでくれる話だった。
昨日までの自分、さっきまでの自分ってもう過去なんだなってすごく実感した。この服を選んだのは過去の自分で。
試着室で今の自分に出会って、考えて、今の自分に似合う服を考える。
それは、変化を求めるということ。
知らず知らずのうちに変化しているという事実とそれは決して悪いものでは無いということ。
少しずつ大人になっていく女性のような、自立心を感じた。
女性が強く生きていく為に、
自分の為に、
背中を押してくれる洋服。
試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
やはり、この題名にはドキリとする。