
ありえないほどうるさいオルゴール店
サンビルにてBooks Victorさんで見つけた文庫本。
オルゴール店なのにうるさいだなんて、と思って手に取り店主と話をしたら買いたくなった本。
オルゴール店に訪れるお客さんたちの人生や、店主の人生が少し描かれている。
今回は心に残った文章を話したい。
でも違った。旅に出れば自然に気がまぎれるわけではないのだ。どこにいたって、結局同じことが心を占めている。
嫌なことを無かったことに、考えないために旅に出たのに、心はずっと孤独で。まさに共感。頭の中を占めて考えているのではなく、心を占めている。という表現にぐっときた。
ぴちぴち、ちゃぷちゃぷ、らんらんらん。
雨だれの歌らしい。これが書いてある擬音だらけの1行にキュンとした。
メニュウ
なんて可愛い表現!!!喫茶店のメニューは、メニュウらしい。あぁ、かわいすぎる🫶
「記憶もそうですよね?うれしい思い出だけが強く残るとは限らない。悲しいできごとをずっと忘れられないこともある。本人が覚えていたいかどうかは別として」
これはオルゴール店の店主が話したこと。好きな曲と心の中に流れている曲は違うかもしれないという。
好きと記憶は比例していないという事実だった。確かに嬉しくもないのに妙に覚えている記憶だったり、訳の分からない一瞬を覚えていたりすることがある。もちろん嬉しかったことも覚えている。自分の意思に反している記憶さえも大事な記憶なのだと実感した。
この言葉を読んだ時に思い出したのは、今考えている「誰かの消えない記憶」という参加企画のこと。前回も応募したのだが、別に話す程でもない記憶だったり、誰かが感じたことへの共感だったり、思い出せない記憶を思い出させてくれたり、他人の人生を感じることができたりする。一応リンクを張ってみる。(インスタにて募集中だそう)
自分自身も応募するのに考えていると、良くも悪くも残っている記憶がある。
今回の本の中にも出てくるが車内で寝ていると思われていて話されている自分に関する親同士の会話だったり、卓球の練習のあの1球のことだったり、学校で雑巾がけしてた瞬間だったり。
この本で好きなのは、同じ店なのに同じ店に見えないところ。
どんな場所にある店なのか、人それぞれの表現があって違う場所にあるかのよう。
店の中に入った時の第一印象は、それぞれの人生、過去の体験、年齢によって変わる。
店主への印象は、人の立場、考え方によって変わる。
オルゴールの曲へは、心情によっても変わる。
「視点」が違うということが当たり前だと改めて感じる本だった。
本から、文章から、言葉から、文字から、
音がする。
「ありえないほどうるさいオルゴール店」
すごく素敵な本だった。