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パニックの原因 考察その4 トラウマ#41
宗教団体による考え方から、平和主義で育ってきたウサツキは、つい気を遣って、嫌なことを嫌だとなかなか言えませんでした。
思い出したくないこと
おかげで、子供の頃は何でもそつなくこなし、曲がったことが嫌いな、いわゆる優等生で、ウサツキは手のかからない子だと言われてきました。しっかりした子で通っていましたが、見るからに大人しく、恥ずかしがり屋で、人から頼まれると断れなくて、周りに気を遣って、好きなことも好きといえない、嫌なことを嫌と言えないような子でした。そのせいか、周りはみんな「ウサツキはやさしい。」と言いました。もちろん、やさしくありたいと思っていたので、本心のやさしさもありますが、仕方なしのやさしさも少なくなかったです。
まぁ、人あたりがいいんだから、別にいいんじゃないの?というようなこの性格。でも、正直、危険です。もし、自分や自分の子、身近な友人が、やさしくて、聞き分けがよくて、困っていたら助けてくれて、嫌なことも引き受けちゃうような子ならば、是非、教えてあげてほしい。
あなたは犯罪に遭いやすい。
断れなかった幼いウサツキ
今は大人になって、ある程度の身構えと常に警戒心を持っているので大丈夫ですが、小学校低学年のウサツキはそうではありませんでした。心の中では嫌だと思っていても、言えない。知らない人についていっちゃダメってわかっていたのに、頼まれると断れない。困っているなら助けなきゃと振り切れなかった。おかげでやっぱり嫌な思いをしました。おかしいと気づいても、怖くて何も出来なかった。
今思えば、それほどひどいことまでには至らなかったものの(相手は中学生だったので、まだ未熟で、何も知らなかったことに救われた。)警察での事情聴取の際、連れて行かれた場所に母と刑事の方を案内したとき、母が「こんなところ!?」と叫びながら倒れそうになったのを見て、あ、私、なんでちゃんとできなかったんだろう。しっかりしてそうで、全然、ダメやん。と自己嫌悪に陥りました。確かに、母になった今の自分が、子供にその場所を案内されたら、うん…間違いなく倒れる。そこは、もしも、殺されていたら、誰にも気づかれないような場所だったので。
誰にも言ってはいけない
母から強く言われたのは、このことは絶対に誰にも言ってはいけない、ということでした。もし、誰かにバレたりでもしたら、お嫁にいけなくなるよ!と。言いつけどおり、誰にも話しませんでした。友達にも家の中でも。母も警察関係のやりとりが終わったあと、その話は一度も口にしませんでした。その頃、同じ小学校のもっと小さな子が痴漢被害にあったらしいと実名で噂が流れたことがあり、うっかり話したりでもしたら噂になってしまう!と恐怖で仕方なかったです。ただ、ウサツキの心の傷は誰に話すこともないまま、ずっと残り続け、もし奴にバッタリ会ったらと思うと、一人で行動することができなくなりました。家族やクラスメイトなどよく知っている人以外の男性は、何考えてるかわからない!と、みんな敵に見えて、逃げるように生きていました。最終的に奴がどうなったのか覚えていません。父に聞けばわかるのでしょうが、多分もう、何にもなかったことにしたかったんでしょう。ウサツキはそれに応えるかたちで平気な振り、忘れた振りをし続けました。母の叫んだ声が耳から離れなくて。
じわじわと癒える傷
30歳近くなった頃に、なんとなくあの日のことを振り返ってみても大丈夫になってきているのがわかりました。大人になって、だんだんと自分の中で大きく占めていた暗い出来事が沢山の出来事に追いやられて小さくなり、大したことなかったんじゃない?と思えるようになっていました。それに乗じて、パニックの原因のひとつは、この暗い話を「誰にも話していないこと」が問題なんじゃないか?と思うようになりました。
誰に話そうか
じゃあ、誰に話そうか、となったときに、浮かんだのは付き合っていた彼ではなく、パニック先輩のセイくんでした。多分、彼の方に急に話したところで、そうか辛かったね。だけで、なぜ、話してみてるかの意図すらわからないと思ったのと、母の「お嫁にいけなくなる」という言葉が頭から離れないというのもあり、無害なセイくんに聞いてもらおうとしました。もはや、ウサツキのカウンセラーです。
意外と平気じゃなかった
いつもはメールでのやりとりでしたが、ちゃんと声に出して聞いて欲しかったので電話で話しました。話す前までは全然平気だったのに、いざ話し出すと言葉につまり、時々無言になったりして、涙も次第に溢れてきて…。あー、なんだ、私、20年以上も前のことなのに、まだまだ傷ついたままなんだなと再認識しました。セイくんはうん、うんとずっとゆっくり聞いてくれて、聞かされても返答に困るような内容で申し訳ないなと思いながらも、最後に言ってくれた言葉は意外な内容でした。
「その気持ち、すごくわかるよ。実は僕も誰にも話したことがないけれども、小さい時に同じようなことがあったよ。」
セイくんの過去
セイくんはウサツキが話したのと同じように、その出来事の詳細を話してくれました。ウサツキは母に話して警察沙汰になりましたが、セイくんは本当に誰にも話していない。しかも、近所の人。まだ小さくてされたことがよく分からなかったけれども、成長するにつれて憎悪が増してきたと。ただ、誰にも話していない分、恨む動機もわからないから、いつかそいつを始末するために自分は生きていると。
仏の悟りのセイくんにこんな感情があったことに驚きつつも、復讐心はウサツキにもないわけではないので、なるほど!そりゃいい!と思いました。ただ、セイくんと違って、もう奴はどこにいるのかわからない。ほんとはきっと、あのときにきちんと闘えば、奴に制裁を下せたのに。『ひとつ屋根の下』というドラマをご存知でしょうか。きちんと裁判をして闘おうというあんちゃんか、傷つくだけだから忘れさせようとするちい兄ちゃんかで、ウサツキの両親は傷つけないためにちい兄ちゃんを選んだのです。(分かりにくいかもですが、このドラマを観て、小梅の事件に心が痛みました。自分があんちゃんに叱られてるみたいな気分になりました。)何が正解だったのかはわかりませんが、私にとってはよくても、社会においては多分、間違いなんでしょう。おそらく奴は同じことを繰り返す。被害者が増える。早くあんな奴、消えてしまえばいいのに。不幸になれ〜という呪いだけではダメなんでしょうね。セイくんの復讐はまだ終わっていません。でも、…きっと理性が勝って、なんだかんだ手は下せないと思うのと、ウサツキのように、いつしか気持ちが落ち着いていくんじゃないかなと思います。何が答えなんでしょうね。
話した効果
セイくんに話したことで知ってくれている人がいるという心の余裕と、たまたまセイくんも同じだったことで、身近に苦しんでいる人がいることの1人じゃない感から、心のつかえがとれたような、すっきりとした気分になりました。一歩前へ進めたような、まさに、王様の耳はロバの耳ーー!!
蓋をした気持ちはゆっくり開けてみよう
こうして、少しずつ蓋を開けていくことが、パニックの快方にいい影響を与えたのかなと今は思います。セイくんに話してから10年ほど経ちましたが、今なら夫にも話せるような気がします。子供たちにも同じ経験をして欲しくないし、犯罪者側になって欲しくないという意味でも、傷が本当に癒えるのに、30年以上もかかるということを、時期が来たら話してもいいかなと思います。そして、また、そうしたときに、ウサツキの中のモヤッとがもっと解消されていくんだろうな。
塞いだままの気持ちは歪んで出てきてしまう。そうなる前にガス抜きしよう。この公開設定ボタンを押した後、またウサツキのなかで癒える思いががあるのでしょう。
しかし、未だに人から道はよく聞かれるし、観光地行けばカメラのシャッターをお願いされる。いい人オーラをなんとかしなければ…汗