COMME des GARCONS HOMME なんの変哲もないチノパンツ
とにかく「なんの変哲もないチノパン」が欲しかった。
まず、テーパードでないストレートであること。
次に、股上が浅いこと。具体的には30cm未満。ヒップ周りをスッキリさせたかった。
さらに、501よりもワイドシルエットで、裾幅が23〜25cmくらいでクリースは無し。そして、濃いめベージュのガシガシ履ける綿100素材であること。
要は、最近流行りのシルエットやカラーの真逆を行くチノパンを求めていた。
なんの変哲もない服ほど難しいものはない。
当人は「なんの変哲もない服」を探しているつもりでも、その実、探しているのは「俺の考える最強のベーシック」という名の青い鳥である。
99.9にどれだけ9を続けても100にはならず、100は100以外のものでは存在し得ない。往々にしてこの手のケースは、70点〜80点くらいで妥協して目と耳を塞ぐか、「上りはどこだ」「上がりを知りたい」と呻きながら実在するかも分からぬ100点を求めて彷徨う亡者となるかのいずれかの道を辿る。
猫も杓子もハイウェスト股上35cm。色が薄いのよ冷めた粥みたいな色だしすんな。ワイドに見せかけテーパード「流行のワイドシルエットだけどスッキリ履ける」じゃねぇのよ昔のラフシモンズ を見習え男は黙ってドカンしろ。そうボヤくものの、そもそも必須要素が悉く流行りの逆張りなので、品質が担保される水準の現行品では当たりはまず存在しない。
こうなるともう過去の商品を探す他ない。ではメルカリヤフオクの検索ワードはどうするか。
ベーシックに強いブランドであること。それなりに流行の変遷に立ち会い続けてきたブランドであること。さらに一昔前の商品でも程度の良い状態の服が手に入られる程度に価値体系が確立しているブランド。
私にとってのそれは、コムデギャルソンオムだ。
ベーシックなブランド、ギャルソンオム。
いや、ランウェイやアイテム単体を見ても別にベーシックではない。ただし、他のギャルソン一門のアイテムやセレクトショップで他のデザイナーズブランドの中に、このブランドのシンプルではっきりした色味のアイテムが並んでいると、相対的にベーシックに見えてしまうので、モード畑育ちの私には「ベーシックなブランド」のイメージが刷り込まれているのだ。
洋服オタクの友達「価格が高い順ソート」ではなく、安い順にソート。さらにサイズでソート。上記の条件となるべく新品に近い状態。写真のツラをよく確かめる…
あったよあった。13,000?もうタダじゃん。でも股上の寸法未記載なので質問。29cm完璧じゃん、ポチー。
到着して現品を確かめるまでは安心できない前買ったパンツは丈が短すぎて泣いたからな。
来た、見た、着た。
いた。いたよ青い鳥。
ウエストはベルト無しでもジャスト。
懐かしさすら感じるローライズ。
ギャルソンらしいパキついた発色。
ワイドストレート。
裾ワンクッション調整不要。
ついに見つけた。理想のチノパンツ。
画像を見てもこれの一体どこが理想的チノパンなのか他人には全く分からないだろうし、このチノパンが他人においても理想的チノパンである訳ではなく、あくまで完璧(n=1)であるが、妥協も盲信もなく「俺にとっての最強の服」と言い切れるほど会心の一着は、一生にそうお目にかかれるものではない。こんななんの変哲もない服に私は打ちのめされたのである。