ゆでたての赤血球はぷるんとして
「ななちゃん、これが赤血球よ〜」
しらたま団子をゆでながら、母が言う。
おかあさん。
まだ5歳かそこらの子どもに、
これから食べるおやつの例えとして、
「赤血球」は、どうかと思うんよ。
白玉粉と豆腐を
(豆腐だと水で混ぜるよりもしっとり仕上がる)
耳たぶくらいの硬さになるまで混ぜ合わせる。
ひと口大に丸めたら、
真ん中を軽くおさえてくぼみをつける。
子どもの頃、
この、たしかに赤血球のカタチをした
しらたま団子を、母とよく作った。
ゆでたての赤血球に、
きなこと黒蜜をかけて食べる。
「黄な粉と黒蜜をかけた赤血球型白玉団子」。
ちょっと色が渋滞しすぎの感は否めないとしても、
子どもの頃の幸せな思い出として記憶している。
パックで買う3本100円のお団子とはちがって、
あったかくてぷるんとしたしらたま団子は
かざりけのない素朴な甘さでおいしかった。
子どもの頃は「赤血球」が何か分からず
音として聞いていたので、
よく「セッケッキュウつくるー」と
無邪気にせがんだ気がする。
後年「赤血球」だと知ったときは
いかがなものかと思ったけれど、
いつか自分も
子どもとしらたま団子を作る日がきたら、
きっと「これが赤血球よ」と言ってしまうだろう。