戸津川 良/和ファーム
作物の廃棄に疑問を抱いた元青果バイヤーが作るレア作物
■プロフィール
高校卒業後、専門学校で簿記や会計を学ぶ。20歳からは、父親が島根県浜田市内に創業したスーパーマーケットのチェーン店で20年近くにわたって、野菜や果物の仕入れ担当として勤務。
心の病を患ったこともきっかけになり、農業を志すようになった2015年、米と多品目野菜を作っている農家に弟子入りし、1年にわたって修行に励む。
移住先のイベントや会合などに顔を出して、地域社会に積極的に馴染むよう努力するうちに、農地を任せたいと応援してくれる人が増え、2016年の就農以来、毎年1,000㎡ずつ生産面積を広げている。
■農業を職業にした理由
父が創業したスーパーマーケットで、青果バイヤーとして働いていた間、傷モノや古くなった野菜や果物を廃棄する毎日に疑問を感じるようになった。
その後、実際に生産者のもとで農作業を体験して、野菜がどうやって作られているのか学んだことで、より一層、強い罪悪感を抱くように…。
モノの大切さをより多くの人に知ってもらいたい想いから、自分たちができること、きっかけの場を作るためには、当事者である生産者を目指す必要があると感じて就農を決意する。
収益性を考えて単一品目型でスタートしたが、品質面や収穫量が追いつかなかった。悩んでいたところ、研修先の師匠が口にしていた「自分で食べるものは自分で育てるべき」という教えを思い出して、多品目野菜の生産農家として再出発。
当初は小売店や飲食店を中心に販路を開拓していたが、2017年からは直販サイトやECサイトでの販売に切り替えたところ、珍しいカラフルな野菜に人気が集まり、ファンが急増中だ。
■農業の魅力とは
今はマーケット(市場ニーズ)ありきで農業が語られることが多いと思います。ですが、一次産業の最大の魅力はモノが作れること。二次産業も原料がなければ製造できない、三次産業もモノがなければ販売さえできない。一次産業は産業の根幹であり、なおかつ自分自身が食べたいものを作って育てられることが魅力です。
収益性、効率性だけを考えるならば、単一品目を大量に出荷する方が事業として成り立ちますが、僕らはお客さんに自信をもって勧めたいから、美味しいと思う野菜を選んで育てています。
紅オクラや星オクラ、カラフルな大根など、一般には知られてない野菜作りを通じて、消費者に感動と幸せを届けたいのです。
農業に正解はなく、さまざまなやり方があるのも魅力ですが、農業に限らず起業にあたっては、退路を絶って逃げ道を無くすくらいの気持ちがないと続きません。
僕は島根と広島の県境に近い中山間地で新規就農しました。移住者にとって、地域社会との付き合いが課題ですが、その土地に住む以上、ローカルルールやモラルは避けて通れません。行事や会合に参加して地域の人に認められることが成功の早道です。
僕にはツテなどありませんでしたが、師匠を通じて、高齢農家から畑の一部を借り受けたり、草刈りしている姿を認められて、「ここも、やってくれっちゃのぉ」と農地を任せてもらえるようになりました。お互いに信頼関係を結ぶことが大事なのです。
■今後の展望
生産面積は1ヘクタール近くまで拡大していますが、中山間地域で機械化が難しい現状を考えると、露地栽培でこれ以上農地を広げるのは難しいと考えています。
最近では農業体験や研修したいというご要望も多いことから、かつての僕自身が師匠から学んだように、就農を希望する若者が学ぶ場所を作りたいと考えています。
すでに「おてつたび」さんがやっているような取り組みを通じて、多くの若者が農業の魅力に気づき始めています。
農業を通じて、人と人とのつながりが生まれ、新しい価値観に結びつく。100年先の農業にバトンをつなげることができたら良いなと考えています。
#40代で就農
#中国
#新規参入
#経営哲学
#挑戦者
#SNS活用
#ユニークな経歴
#SDGs
#直接販売
#レア作物
#話題作物
#農業体験
#農業教育
#地域支援型農業 (CSA)