実は欧州債務危機のときから世界は変わっていた?
逆流するグローバリズム | 竹森俊平著 | 書籍 | PHP研究所
本日の読書感想文はこちら。2014年から2015年にかけての出来事だけど、日本の役割実は大事じゃないか、と思ったのが一言感想。
ギリシア債務危機から欧州債務危機へ
各国の財政統合を伴わない共通通貨の導入は失敗すると各所からさんざん批判されていましたが、案の定、そのとおりになったというのがギリシア債務危機。最適通貨理論っていうのがあって、通貨を共通化するメリットは同様の財政状態にある場合だけ。例えば、ドイツとギリシアが同じ通貨を採用した場合、本来はそれぞれの利回りを変えないと、高金利であるべき国が低金利で調達しすぎてどこかの時点で債務を返すことができずに、下手したら財政破綻してしまう。これ、少し考えたらわかることですが、それよりも共通通貨の導入が優先だ、そこから発生する問題はその都度解決すればいい、という理念先行で通貨を統合した結果、ギリシア債務危機が発生。さらに、ギリシアに金を突っ込んでいたアイルランドのような金融国家の信用不安、不動産バブルが起きていたスペイン、国債の発行高が異常に多いイタリアと危機が拡大。
その中で際立つドイツの強さ
こういう状況になると、貸付が少なく貯蓄が多い国が有利になります。そう、ドイツが名実ともに欧州の盟主となります。ドイツ人の美徳、質素倹約勤勉に加えて、ルールの墨守。さらに、国家財政については、国債の買い入れなんかも許さずに、財政緊縮とくに国家財政は収支均衡以外許さないという頑なな態度。
これが今回の有事解決には大きな足かせとなります。今回のような未曽有の危機については、お金を無制限に発行して、ギリシアをはじめとする、債務危機国の返済には問題がないと宣言することが解決策。もう1つは債務をすべて放棄して、EUから対象国を切り離すこと。結局は、前者を選択し、今に至ります。
そして、日本の役割
実はEUでドイツが独り勝ちになっていたのは中国への経済依存がありました。ドイツといえば製造業。その売り先として、2000年代から10年代でドイツが最も強かったのが中国。これが中国を増長させて今に至る、という点でロシアを増長させた点と合わせて、ここ20年くらいのドイツの所業は今見てもかなり良くない印象。現に、さすがに現首相はようやく米英に近いスタンスになりつつあります。
が、2015年に入ると、急にメルケル首相が日本へ来るようになりました。これはさすがに中国一辺倒は先がないとみたのと、ロシアによるクリミア半島の併合以降のウクライナ支援、さらに欧州債務危機へのアメリカ以外からの支援先という意味で日本の存在が大きく見えてきたのでしょう。IMFの出資も世界2位でアメリカの離脱もあり得る中では、割と重要な位置にいます。
これは、今も同じ。いや、むしろ、中国が日清戦争以前の新しい世界秩序を目指している以上、自由経済、民主制度を採用し、ある程度の経済力がある国といえば日本しかない。2015年を舞台とした話だけど、今につながるなとしみじみと思いましたね。
今の日本の国会のレベルを嘆いたりしても何も変わらないので、これを読んで、日本が今後どのようにふるまうべきかを考えましょう。それに欧州債務危機の際にどのように振舞うべきかはいい材料です。