ラポールの説明の続き
今回もコーチングやセールスコミュニケーションのキモとなるラポールの続きです。
前回の記事では、
ラポールを築くには、相手を良く見ること(キャリブレーション)が重要だとお伝えしました。
今回はキャリブレーションからラポールへいたる流れを例を挙げて説明いたします。
キャリブレーションでは相手の呼吸を測るということもお伝えしましたが、
呼吸を測るだなんて大げさな!
と思われる方に、まずはわかりやすい実験を通して説明します。
いきなりですが、
前に向かってパンチをしてみてください。
空手家のように、はーっとか、やーっとか気合いを入れてみてください。
その時は息を勢いよく吐いていると思います。
いい感じですよね、強くなった気がすると思います。
今度は、すっと息を吸いながら、パンチをしてみてください。
力が入らずフニャっとしたパンチになってしまったのではないでしょうか。
これでわかる通り、攻撃といったような積極的に気を込めたアクションを取る時は、息を吐いて行います。
言い換えれば、息を吸っている時は攻撃に気が入りにくく、これを吸う気(スキ)と言います。
だから皆相手のスキを狙って何かを仕掛けるのです。
なんで戦いの話になっちゃうのと言われるかもしれませんが、会話というコミューニケーションもこれと共通していて、
話す時は息を吐いて行います。
息を吸いながら話す人はまずいないはずです。
そして相手が話している最中は、相手のエネルギーがずっと放たれている状態で、その時はスキがないので、相手の懐には入り込めません。
こちらから何かを伝えるには、相手が話し終わるのを待つわけですが、相手が話し終えた後、息を継ぐ瞬間に話すと非常に効果的です。
相手の吸う気(スキ)に乗っかって入っていくからです。
その逆の悪い例が口論です。
相手の話を遮って話してしまうので、お互いに気持ちが止められた気がして余計にフラストレーションがたまりますし、お互いに聞く耳を持たない経験が誰にでもおありだと思います。
じゃあ例えばどんな感じにスキを見ながら話すのか?
カスタマーサービスのオペレーターを例にとります。
お客がすごい剣幕で怒鳴ってくることが多くあるのがカスタマーサービスだと思います。
その際すぐに謝罪せずに、相手が怒鳴りながら話す合間の息を継ぐタイミングで、
確かにお怒りになるのも最もです、
というように相槌を打っていき、相手の早かった呼吸が鎮まってきたところでさらに吸う気(スキ)のときに謝りの言葉を入れ、どんな対処ができるかをお伝えする。
相手が怒って話している途中は、謝っても響かないので根気よく次の息継ぎまで待ちます。
さてここまでがラポールを築くためのキャリブレーションの説明ですが、
この一連の段取りについておさらいすると、
まず自分の心を鎮めて自分の五感が正常に作動するようにし、相手の状態をキャリブレーションして、相手の立場に立つ、すなわち相手の状態になりきる。
そしてお互いの波長が同期して心地よい状態ができたら、相手がいきたいと思う方向にリードしていくという流れです。
相手の状態を尊重して、怒っているなら十分に怒ってもらう、悲しんでいるなら十分に悲しんでもらう、そして相手と同じ立場に立って、その感情を助けて、確かにそれは、怒るのも、最もだ。 それはすごい悲しいことだ。
と共感することによって相手はそのエネルギーを出し切ります、そうすると心に新たな空間が出てくるので、そこに新しい感情を提案していきます。
ラポールが築かれる際の特徴として、相手は一瞬驚いて、
あれ? この人の反応ちょっと違うな、普通なら、否定するか、いきなり励ましてきたりするはずなのに
というように急に心のつっかえ棒を外されたような、重心をずらされるような感覚が出てくるというのがあります。
婚活なら、
あれこの人って今までの人と違う、ちょっと興味がわくなー。
セールスなら、
あれ、このセールスマン、予想してたのと全然違う反応してくるけどなんかいいなー。
となって、驚きと同時に心に空白ができて、そこに好奇心が生まれてきます。
ちょっとこの人のいうことなら聞いてみてもいいかも、
となります。
そうなれば事はなったも同じです。
事前にクライエント、お客さん、デートの相手から聞いておいた、理想の状態にいく手助けをしていきます。
さてラポールについてまだピンとこない方も多くいらっしゃると思うので、最後にミルトンエリクソンというNLPに多大な影響を与えた催眠療法家のストーリーを持って説明します。
その前にもう一度だけ、ラポールを築くことを含めたコーチングの段取りを説明しますと(くどいようですみません)
自身の状態管理 ー> キャリブレーション ー> 相手の立場にたつ ー> 相手の行きたい方向に導く
となります。
この段取りを頭に入れながら以下のストーリーをお読みいただくとラポールの理解が深まると思います。
2−3分で読めます。
ある日ミルトンエリクソンの名声を聞きつけた精神科病院の院長が、ミルトンに連絡をしてきました。
院長いわく、
うちに誰のいうことも聞かない患者がいて、彼は一切病室から出ようとしないんだ。 一日に少なくとも一回は、病室から出て、体を動かさないと彼の病気は一向によくならない。
なんとか彼を病室から一回でも出てもらう手立てはないものか。
わかりました、お役に立てるかどうかわかりませんが、とにかくお伺いします。
と二つ返事で訪問することを約束したミルトンは、後日その病院を訪ね、その患者の病室に向かった。
病室に入ると、当該の患者は、なぜかせっせと板切れをつなぎわせていた。ミルトンは好奇心を持って、その患者に
やあ、何をしてるんだい?
と訪ねた。
患者は、
悪魔が窓から襲ってくるのを防ぐために目張りをするんだ。
と答え、黙々と作業を続けていた。
ミルトンは、
おーそれはいけない。窓から悪魔が入ってきては大変だ、私にもぜひ手伝わせてくれ
と言って上着を脱ぎ、腕まくりをして、患者の作業を手伝い始めた。
患者は多少戸惑い、驚きながらもミルトンの真摯に手伝う姿勢に勇気付けられ、作業をさらに続けた。
二人は作業に没頭し、数時間後には、患者の病室にある全ての窓が板でふさがれることになった。
一息ついた後、ミルトンは、患者に向かって、
あーよかったこれで窓から悪魔が入ってこれないね。
患者は答えて、
ミルトンさん、どうもありがとう、おかげで作業が早く進みました、今日は安心して眠れます。
にっこりしながらミルトンは続けて
力になれてよかったよ。 あ、でもちょっと待ってよ、あなたの部屋は大丈夫になったけど、この病院には他にもたくさん窓があるなー。 そうだ、どうだろう、私も手伝うから、他の窓も目張りして回らないか?
すると患者は、
おー、確かにそうだ、ぜひやりましょう。
と言ってしばらく着ていなかった上着を羽織り、喜び勇んで病室から出ていきました。。。
いかがでしょうか、このストーリーでなんとくラポールがわかっていただけたら幸いです。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。