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転んだ後は…

 嘘みたいな転び方をした。僕ではなく、公園にいた猫がだ。最近、健康のために近所の公園で散歩をしている。体重や見た目には変化がないのだが、健康診断の数値に僅かな変化が見られたのだ。これを見過ごすと、しばらく数値の変化を見なくなる予感があった。自分の性格は自分が一番良く知っている。
 歩きながらふとベンチを見ると、猫がそこから降りようとしているところだった。降りようとしては座り、降りようとしては座るを繰り返す。僕は足を止めて猫を見守ることにした。何か不調があるのではと心配だったのだ。
 15分ほど、猫は降りることに躊躇していた。地面は安全に見えるのだが、猫から見ると安全ではないのかもしれない。
 猫は意を決してベンチから降りて無事着地をしたのだが、僕には見えない何かを避ける際、嘘みたいに転んだ。
 猫と僕の目が合う。転んで恥ずかしい猫と見ていけないものを見た僕の間には、気まずい空気が流れた。

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