レコードのジャケットの話(うんちく)
クラウドファンディングが無事終わり、目下DVDの制作に追われる傍、ひょんなことからレコードに関わる仕事が始まった。
ついこの間までレコードの仕様とその金額に頭を抱えながらやってきたことが、こんな形で生きるとは。
僕が作りたかったレコードは12inchのA式と呼ばれるジャケットの中に、ビニールスリーブに入れたレコードを封入する。予算が許すなら、そのビニールに入ったレコードを、印刷できるインナースリーブ の中に入れたかった。
A式の紙の分厚さよ!
印刷されたインナースリーブ の図
(参照:HONNE WARM ON A COLD NIGHT)
しかしながら、もうとにかくこれが高いのです。
なので、印刷できるインナースリーブを諦めて、その代わりに、A式のジャケットを残した形。このA式とE式の違い、詳しい人はすぐわかると思うけど、知らない人にとっては、なんの話かさっぱり。
値段はA式の方が倍くらい高いです。
A式はアメリカ式から来ていると言われている仕様で、自分の親の世代のレコード棚のレコードは大体がこの仕様です。要はジャケットが分厚くてがっしりした作りです。ガタイがいいわりに、封入物の出し入れがしにくくて、紙のスリーブを入れようものなら、レコードが取り出しにくい。あと傷や落下には強い代わりに、薄い紙を幾重にも重ねたボール紙に印刷物を貼るので、むき出しのボール紙の部分がやたら湿気に弱い。親父のレコードは4隅がふがふがになってカビが生えたりしてる。A式のゲートフォールド(見開き)にも二種類あって、折り返して止めただけのシンプルなものもあれば、厚紙を包み込んで貼り付け、内側をに一枚貼り付けて完成するタイプもあります。これはよく日本の海外作品のデラックス版で使われていた仕様でもあって、海外のとあるサイトでは「日本式ゲートフォールド」と記載するところもあるほどです。最近はちょっとTOO MACHな感じがするほどゴージャスです。
四隅を内側に折り返した後に一枚貼り付けるタイプのA式ゲートフォールド
E式はヨーロッパ式から来ていると言われていて、作りがシンプルで紙が薄い代わりに、安く、分厚くない分中に色々入れられる。最近はこちらが圧倒的に主流で、新品のレコードや、リイシュー物はほとんどこの仕様。スッキリしてて軽いのと、ゲートフォールドという見開きのジャケットにしても価格がそんなに高くない。ゲートフォールドに加え、紙をPP加工にすれば気持ち分厚くて綺麗。
E式の紙の薄さを表す図
豪華なE式。アウタースリーブの中にも印刷するやつ。
自分は懐古主義ではないんですが、なんでA式がよかったかを改めて考えてました。
単純に、ハードカバーの本みたいな作品だと思うのでA式を選んだんですが、よく考えてみたらハードカバーの本みたいな作品も、最近では全部E式なんですよね。
昔はレコードがあたりまえだったから、なんていうか親父世代、扱いが雑なんですよね。でも、A式みたいな仕様があたりまえだった時代。3000枚とか10000枚とか平気で売ってた時代が過ぎて、小ロットの受注生産に移行した現代において、化石みたいなその仕様に、Emeraldの楽曲を残したかったのかもしれない。PP加工でつやつやにしてみたりして、今から仕上がりが楽しみ。
パールが作ったあのジャケがでっかく手元にやってくる日が楽しみ。
次はカッティングに立ち会った話書きますね!
EmeraldのPavlov Cityのレコードの予約始まってます。
たくさん予約が入ればたくさん作れる。
CDもこんな風に売れたら、在庫に圧迫されて暮らすアーティストも減るのにね。僕らはそんなに在庫ないのでいいですが、、。
旧譜が大事に省みられる世の中になればいいけど、やっぱりずっと新作が踊り続ける世の中なのです。
だから、レコードの丁寧なリイシューは素敵なのです。
クラムボンの7inchリイシューはかなり素敵ですね。
一昨年あたりからすごく活発化してます。
日本の音楽が進化と同時に、さらに豊かな深さに満ちた状況になりますように。
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