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ヘンゼルとグレーテル、魔女の罠にハマっていたら【400字小説】

甘い匂いに包まれていた。ボクもグレーテルもふわふわ気持ち良い気分だった。食べたこともないようなたくさんのお菓子が目に飛び込んできたから。しかも、信じられない大きさで!だからおかしいと確かに思って、魔女の罠だということにすぐ気づいた。でもボクだってグレーテルだって疲れていたし、もうここで人生が終わってもいい気がしていた。魔女に食べられる時、どうせグレーテルは死んでいる。魔女がボクを丸焼きしようとする時、どうせグレーテルは何もできない。左手薬指の先が痛いのは、森で棘のある植物を触ってしまったからで、でもきっと魔女に殺される時はすごく痛いんだろうなと覚悟した。もしかして魔法で苦しまずに殺してくれるなら、それはすごい魔法だ。腹ぺこで苦しむ世界はまっぴらだった。だから魔女にすべてを任せる。ボクはおいしくないだろうけれど、グレーテルはおいしいよ、良い子だから。

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