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ぬ【400字小説】

『白日』で泣いた。
それをさとしくんに言ったら
「今さら?」って鼻で笑われた。
「バカにしないでよ!」と
わたしは肩パンチをお見舞いするも、
牧場の牛にドロップキックしても
効かないみたいに、全然。

「怒っちゃやーよ」
「正直な話、年下のバンドマンに
泣かされるとは思ってなかった」
「え、マジでさ、
聴いたことなかったの?」
「うん、こないだ、
美容院で初めて聴いて」
「笑われなかった?」
「美容師さん、
さとしくんみたいに
意地悪じゃないから」

その美容師とわたしは
隠れて付き合ってる。
さとしくんとも
別れるつもりはない。

≪♪取り返しのつかない過ちの
一つや二つくらい
誰にでもあるよな!≫
ってところが
『白日』で一番好きなところ。

それをさとしくんに
言おうと思ったけれど、
また攻撃してくるから、
わたしはまた鳴いて。

ホテルの部屋の照明は嘘っぽい。
ピンクやパープルで軽薄な感じが。
そこでがむしゃらに腰を振っている。
それは超*現実。
その衝動だけが本当で本物。

❏❏❏

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