【血の粥】こだまの行方(61)
惨い儀式となった《ことほぎの儀》でムラ長は最期の力を振り絞って、紫の雨を降らせた。そのまま息絶えてしまったが、何日か雨が降り続けるほど強力な《祈り》の呪術だった。紫の雨は、千切れて落ちたコバートの腐った右腕に降り注いだ。数日すると、にょきにょきと傷から体が生えてくる。それは生き霊だったエコーの魂を宿した。コバートの肉体的特徴も持っていたが、エコーともコバートとも違う顔。そうだ、コバートの父、コベインの姿にそっくりだ。ムラ長が彼を呼んだのだ。復活したエコーの魂も体も記憶を失くしていた。行く先は知らず、ほどなくしてムラを離れた。放浪した末、マチの軍隊の捕虜になる。名前も与えられず、番号で軍隊に入隊させられ、一緒に生活していたムラ民の虐殺を繰り返した。しかし、心を失くしていたので、自分の惨たらしさを悲しみもせずに、ただ名前のない不自由な人生を憎み、生きた。失くし人となって九年後、血の病で死んだ。
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