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#小説
ゾンビ涙色【400字小説】
赤ん坊の時だって記憶がない、泣いた。
母も「あなたは泣かなかった」って
いまだに気味悪がって。
そんな調子だから親の愛情は。
母はまずい料理を作ってくれるから
まだマシで、父はほかに女性を作って、
そっちの家庭ばかりに帰る。
映画監督なんてろくでもない仕事。
あんな陳腐な映画ばかりなのに、
毎回、日本中の1億2千万人を泣かせる。
バカみたい。
でも実は最新作『教養など必要ない』は観たい。
死ん
電話酔い【400字小説】
やたらと《いいね!》するあの男。
「ドライブ、どう?」って
ダサいナンパの手口みたいなことを
インスタのDMで。
「結構です」って気弱な私でも、
案外強く断ったつもり。
一応、結婚しているし。
夫のことはもう愛していないけれど。
小学1年生の息子だけのために生きる。
どんなにそれが大変でも。
だから性欲なんてない。
ましてや、浮気なんて
アホ臭いことはしませんヨ。
多分このまま
セカンドヴァージ
相談【400字小説】
19歳だった私の痩せた体を取り戻して。
40歳になって、代謝がにっちもさっちもいかない。
デートしたい。
彼氏は7年もいない。
このままBBAに。
もしかして、もうなってる?
白髪が気になるねって、
気になっている男性社員から。
社交辞令みたいで残酷。
明後日の土曜日、
予定が空いているから
「お食事でも」って誘うのは
女性らしくないかしら。
彼のローリング・ストーンズの話ならついてイケる。
太陽【400字小説】
「≪バンドを組みたい≫というのが夢。
だから夢は叶っている」
と言ったのはミック・ジャガー。
あれ、ヒロトだったっけ?!
わたしは小説で有名になりたいとは思ってない。
小説は≪手段≫ではない。
ただ命ある限り、書き続けられれば満足。
新人文学賞に応募しても
箸にも棒にも掛からないし、
友人に読んでもらっても
「よくわからない」と言われるのが関の山。
だから大事なことを見落として、
落ち込みがちで
絶対【400字小説】
バカなんじゃないの?!
「きみたちには無限の可能性がある」
ってウチダ先生が。
春になったら中学生になるから、
そんなことあり得ないって、わたしは。
まあ、男子は
そんなンじゃないみたいだけどね。
特にわたしが片想いしている
ソウタくんは、目をキラキラさせて。
ウチダ信者だからな。
12歳のわたしたちにとって
担任の先生の影響力は絶大だから、
わからないこともないけれど。
わたしはウチダ先生が
離婚【400字小説】
ローリング・ストーンズなんて嫌い。
≪夢≫や≪希望≫を持って
何が悪いっていうの?!
彼らはそれを全否定する曲を
歌い、演奏して。
努力は絶対に実を結ぶものなの。
才能なんて必要なくて、
ううん、それは誤解を
招くから言い直すと
≪続けること≫だけが、
人にとって唯一の必須な才能。
表現者とか関係なく。
ミック・ジャガーはよくも白々しく
≪努力は無駄に終わる≫
なんて歌うのかしら。
キース・リチ
柔軟【400字小説】
みんなに嘘をついている。
みんなって誰?!
とか訊くのは野暮だね。
浮気はしないって
豪語しているけれど、
本当は、ほんの数年前まで。
彼女のことが好きで。
彼女も多分、好きでいてくれて。
なんで会わなくなったのかは、
時間の問題。
結婚していた、お互いに。
子どももいた、
あっちにも、こっちにも。
妻は薄々気づいているかもしれない。
怖いから訊かないでいるだけだと、私は。
もし「女の人と