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30代の地方公務員がMFA(芸術修士)を取得するまで

2年間の学生生活が一区切りしました。評価結果が出て、無事に卒業できそうだとわかりホッとしたところで、こちらのnoteです。

学びによる異物がアタマとカラダを駆け巡り、少し生まれ変わってきた感覚があります。入学前とは明らかに違う自分になることができました。

そんな30代の生まれ変わりに繋がった、私のMFA取得が本稿の主題です。

※ 公務員の方、大学院/MFA/学び直しに興味がある方、におすすめです。

私は、京都芸術大学大学院(通信教育)学際デザイン研究領域(IDS:Interdisciplinary Design Studies)に通ってMFAを取得しました。完全オンラインだから一度も通学していません。

そんな、オンライン芸大院生ライフを振り返っていきます。


MFAってなんなん?

Master of Fine Arts:芸術修士のことです。バチェラー、マスター、ドクター、のマスターになります。

MFA(芸術修士)とは?
MFAは“Master of Fine Arts”の略称で、日本では「芸術修士」や「美術学修士」と呼ばれています。
“New MBA”とも言われ、MBA(経営学修士)のようなグローバルスタンダードな学位として、世界的に注目が集まっています。

京都芸術大学大学院(通信教育)

グローバルスタンダードな学位になるかどうかはわかりませんが、興味があればトライして損はなさそうなもの。という程度に私は捉えています。

あと、人文系の学部卒の方は、大学院での研究に従事すること自体がとても成長につながるのではないかと思います。調査、考察、仮説、立証、こういった研究の流れは仕事にも必ず生きてきます。(特に行政施策やまちづくり関係)
逆を言えば、人文系の学部卒者が多い公務員が持つ弱点を克服する、いい機会になるのではないでしょうか。
「EBPMだ!」とか言われてあたふたすることもなくなりますし、ともすれば検討材料が「量的調査」に偏りがちな役所業界の習慣を見直すことにもつながるかと思います。


なぜわざわざ入学しようと思ったのか

昨今、右向いても左向いても「課題解決課題解決」といわれており、少し飽き飽きしていました。

【課題発見 → 解決策のアイデア → ビジネスの種】

これはこれで正しいと思います。しかし、「そんな単純なのか?」という思いや「みんな同じ方向に向き始めている」という天邪鬼な思考もあったところ、偶然にも「完全オンラインでMFAが取得できる大学院のコースがあるよ」と紹介を受けて、「コレだ!!」となり入学を決意しました。

理由を整理すると、以下3点です。

  1. なにか「修士号」を取得しておきたかった。

  2. 私のバックグラウンドの一つである「クリエイター」という側面を活かす最適な学位だと考えた。

  3. 完全オンラインなので仕事との両立がしやすく、学費も優しい。※

※公務員は、厚労省の「職業訓練給付金」を受けることができないので、学ぶなら全て自費で賄わねばならないのです。この点については、友人の川那さんのnoteで取り上げていますので参考までコチラにリンクを貼っておきます。

昇任するかキャリアチェンジするか…その決断の前にMFAを取ろうと考え出願し、晴れて12年振りに学生となりました。


1年目→詰め込み

2021年4月、草鞋がまた一つ増えた新生活がスタートしました。楽しく小っ恥ずかしく刺激的で忙しないM1でした。睡眠時間が2〜3時間という日も多かったと記憶しています。
約50名、20代〜60代、職業もクリエイターや広告代理店やメディア関係から公共や建築や医療業界まで、大変幅広い分野の方々と学友になりました。

これはカリキュラムの組み方もあると思いますが、なかなかにハードな日々になりました。

特に、本業と副業、ともにピーキーだった前期ラストの8月は「必修を1つ後期に回す」という決断をして分散しました。
それでもレポートの締め切りラッシュ期はなかなかツラくて、眠気に襲われては起きて執筆することを繰り返す “起き上がり小法師” の作業となりました。

学ぶ中で同期のメンバーと共に悩み、わかったかと思ったらまた遠ざかっていく「本質」のようなものに翻弄されながら、一年が過ぎていきました。

私の生活リズムは、家庭内での検討と試行錯誤をした結果、「基本、睡眠時間を削る」という手段に落ち着きました。
日々、子供が寝た後に学びをスタートするスタイルで、土日も夜に稼働する、という日々でした。

「今日は図書館に一日籠ってレポートに取り組みました♪」

ってのをやるのが夢でしたが、叶わず。その実態は、夜な夜な「はぁ。。。やるか。」という、繁忙期の残業にも似た大学院ライフでした。(楽しいんですけどね)

年が明け、後期の課題が終わって束の間の春休みに入ります。そしてM2で取り組む研究の方向を決め、次なる試練に向かっていくのでした…。

デザイナーの 早川克美 先生 と 歴史学者の 野村朋弘 先生、お二人のどちらかのゼミを選ぶスタイル。私が選んだのは…


2年目→研究漬け

歴史学者の野村先生のゼミを選択しました。デザイン思考を学んだことを踏まえて地域研究をやりたかったためです。そして、グループで具体の研究対象地域を選んで深めていきます。選んだ地域は、日本有数の豪雪地帯である新潟県南魚沼市です。

デスクリサーチとフィールドリサーチを繰り返し、グループとしての「鳥の目」を作っていきました。地域を見る目を研ぎ澄ましていき、視点や情報を共有していく4ヶ月間でした。

夏以降は個人研究になり、グループで選んだ地域の中で、文化資産を一つ取り上げて深めていく、「虫の目」で地域を捉える内容でした。

私は、聴覚から地域の風土を捉えるような題材にしようと考え、
「サウンドスケープ(音風景)」か「民謡」の2択で悩みました。

現地で活動されている方々の民謡を実際に聴いたり文献調査をしながら一度は民謡にしようと思ったものの、自分の本心と、グループメンバーをはじめとする同期や先生方の後押しもあり、サウンドスケープに決めました。
(信頼している方々から背中を押してもらうのって、なかなか素敵な出来事です!)

※ 南魚沼市 浦佐地域 でのサウンドスケープに関する調査内容は、noteでもまとめているのでご興味があればご覧ください。

※ プロトタイプとして制作した動画コンテンツ「聴く、浦佐フットパス」というのもあります。IDSでは、考察だけでなく、カタチにすることも求められるのが特徴です。


ちなみに、私のチームの他のメンバーは、

木喰仏
発酵食文化
里山伏
浦佐多聞青年団

ということで、有形無形さまざまな文化資産を取り上げて研究しました。
濃ゆいメンバー(それぞれ凄腕かつ変な方々!)に囲まれて、おかげさまで刺激的で楽しいゼミライフを送ることができました。こういうのが大学院ならでは、かつ二度とない学びの機会です。

南魚沼には、合計5回くらい行きました。(他のメンバーは倍以上くらい行ってる方も…)
家族旅行も南魚沼の温泉に誘導する公私混同っぷり。
ちなみに、旅行中でも夜な夜な宿を抜け出して、現地の知り合いにお会いして色々と教えてもらいました。家族からは呆れられていたことでしょうし、娘からは「パパなんでこんな時間にどこいくの?」と問い詰められました。。。
(遊びじゃないよ、調査だよ)

12月ころ、これまでの調査〜考察を踏まえ、過去〜現在〜未来を「魚の目」で捉えて、1月の最終発表に向けた提案のプロトタイピングをしました。その一つが、こちらのWEBサイトです。

やはりこういった、アウトプットをしていくのが、IDSの醍醐味かもしれません。可視化していく=デザイン、というわけです。

一点、1月上旬には論文提出だったので、スケジュール的に雪が積もってからの調査ができなかったのが唯一の心残りです。
2月に訪問したときは、本来の姿である雪景色でした。

雪を被った八海山はとても美しい

また、2月には地域誌「雪国新聞」へ3週連続で連載掲載していただきました。(2/3, 2/10, 2/17)

2023年2月3日 雪国新聞より

地道ですが、研究概要を地域の方々に見ていただくいい機会になったのではないかと思います。


結局、MFAってなんなのよ

あるビジネススクールで先生をされている方とお話しした際の言葉が印象的でした。

MFAの人たちは “バリューファインダー” ってことね。

しんちゃん

MFA保持者の役割は、未発掘の価値を見つけ出して可視化する「価値発見器」なのだと思っています。

芸術を、“人が生きやすくなるための、それぞれの表現”と定義するならば、

・日々のちょっとしたこと
・風化しそうだけど残したい文化的資産
・ある地域では価値と認識される”何か”

といった、そのままでは食べられない(売れない)“生の資源”にスポットを当てる役割なのだと考えています。

そんな役割を果たしながら、地域社会に貢献していく研究に引き続き取り組んでいきたいと思います。


終わりに 〜芸術はn=1〜

「芸術」というものは、至極パーソナルなものだと考えています。一人一人が、自分が生きやすくなるような環境(これを芸術環境といいます)を模索し、発見し、向き合うことができると、地域や社会の表情も豊かになっていくのではないでしょうか。
そんな動きに、MFA保持者がお役に立てるかもしれません。

卒業式はこれからですが、初めてキャンパスに行きます。オンライン大学院ならでは。
(いまさら「はじめまして」な方もいます)

人が集まって、共に学んでいく。大変ですが、ワクワクする時間です。学ぶことが、多くの人にとってもっと身近になることを願います。

それでは、ごきげんよう。

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