民執 強制執行(直接強制、代替執行、間接強制)
強制執行(強制履行)(民執22~170条)の方法として、直接強制、代替執行、間接強制の三種があります。
直接強制とは、強制履行の執行方法の一つで、債務者の意思とは関係なく執行機関が債務者の財産に直接権力を加えて、給付内容の実現を図るものをいいます(民法414条1項, 民執43条から167条、168~170条、180~195条)。
たとえば、金銭債権について、債務者の財産を換価して、これを債権者に与えるのが直接強制です。
現行法では、金銭債権の執行(民執43条以下)、特定の動産の引渡しを求める債権の執行(民執169条)、第三者の手中に存する目的物の引渡しを求める債権の執行(民執170条)は、この原則的な直接強制の方法によって行われます。
必要であれば、債務者の最低限生活に必要なもの(民事執行法第131条・152条)を除く全財産が差し押さえの対象となりえます。
直接強制ができない代替的作為不作為義務の執行の場合には、代替執行(民法414条2項、民事執行法171条)が行われ、さらに代替執行も不可能な不代替的作為不作為義務執行の場合に間接強制(民事執行法172条)が許されます。
代替執行(民執171条)は、作為債務の中でも代替的作為債務(侵害組成物の廃棄・侵害設備の除去・ 謝罪広告請求など)及びある種の不作為債務(義務違反による物的状態の出現物・残存物の除却)について執行する方法です。
例えば、畑に生い茂っている雑草の除去などの労務は、他人で代替しうる労務といえます。第三者によって代替可能な場合、頑なに債務の履行を拒む債務者の手による履行にこだわる必要はありません。むしろ、第三者に一任しつつ、第三者に支払うべき費用を債務者に支払わせた方が合理的な場合もあります。これのように、第三者に代替して執行させる方法を、代替執行(民執171条)といいます。
間接強制(民執172条)は、作為債務の中でも不代替的作為債務について、債務者に対して一定の不利益を課して債務者に履行するように仕向け、間接的に履行の実現をはかろうとするものである。
間接強制は、例えば、「履行しなければ1日につき1万円を債権者に払え」のようなな一種の罰金を貸すことでその経済的・心理的圧力によって債務者に履行を強制する方法です。
原則として、金銭債権については,間接強制の手続をとることはできません。しかし、扶養義務等に係る金銭債権(民執167条の15)については、間接強制の方法による強制執行をすることができるようです。
●参考文献
・中野貞一郎(著)『民事執行・保全入門 補訂版』(有斐閣,2013)
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