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意匠法3条の2 意匠登録の要件

 本条は、特許法29条の2(拡大先願)に対応した規定です。

1.本条の適用要件

 本条が適用される要件は
(A)先願が存在すること(当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願)
(B)出願後に先願が公開されたこと(当該意匠登録出願後に意匠公報に掲載)
(C)意匠登録出願に係る意匠が、先願における「願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠」の一部と同一又は類似であること、
の3個です。

2.1 要件(A)

 要件(A)は、「先願が存在すること(当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願)」です。
 先願が同日出願の場合は、適用がありません(日前の他の意匠登録出願だから)。先願が分割出願、変更出願である場合、先願の出願日は元の出願日です(意10条の2第2項)。言い換えれば、本条における先願の出願日は、遡及した出願日となります。また、優先権主張を伴う出願の場合は、優先日が先願の出願日になります。
 なお、特許法29条の2では、先願が分割出願、変更出願である場合、先願の出願日は現実の出願日です(遡及効はありません)。

2.2 要件(B)

 要件(B)は、先願が公開されたこと(当該意匠登録出願後に意匠公報に掲載)です。条文では、「第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載」となっています。
 第20条第3項の意匠公報”登録意匠掲載の意匠公報”であり、第66条第3項の意匠公報が、”意9条2項による拒絶審決確定を知らせる意匠公報”です。
 なお、秘密意匠の場合は、意匠公報に掲載後に適用されます。

2.3 要件(C)

 要件(C)は、意匠登録出願に係る意匠が、先願における「願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠」の一部と同一又は類似であること、です。

 先願における「願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠」というのが、先願に係る意匠として開示された意匠です。ただし、先願に係る意匠として開示された意匠には、使用状態を示す図や参考図は含まれません

 意匠の一部とは、先願に係る意匠として開示された意匠の外観の中に含まれた1つの閉じられた領域のことです。つまり、意匠の構成要素である形状、模様、色彩のうちの一つを分離したものは、意匠の一部として取り扱いません。これは、先願とは異なる新規創作としての価値が無いからです(この趣旨は、意1条直結)。


・意匠法3条の2

第三条の二 意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。


・意匠法10条の2

(意匠登録出願の分割)
第十条の二 意匠登録出願人は、意匠登録出願が審査、審判又は再審に係属している場合に限り、二以上の意匠を包含する意匠登録出願の一部を一又は二以上の新たな意匠登録出願とすることができる。
2 前項の規定による意匠登録出願の分割があつたときは、新たな意匠登録出願は、もとの意匠登録出願の時にしたものとみなす。ただし、第四条第三項並びに第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、この限りでない。
3 第一項に規定する新たな意匠登録出願をする場合には、もとの意匠登録出願について提出された書面又は書類であつて、新たな意匠登録出願について第四条第三項又は第十五条第一項において準用する特許法第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第十五条第一項において準用する同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。


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