刑法 間接正犯
間接正犯とは、自ら手を下して犯罪事実を実現するのではなく、直接の実現行為を行う者の背後に居るものが正犯とされる場合をいう。
正犯には、直接正犯と間接正犯とがある。
例えば、殺人がなされた場合、殺人の実行行為を直接行った者は直接正犯である。この殺人の実行行為を1人で行った場合には単独正犯になる。
間接正犯は、自ら直接に犯罪を実現させた場合(正犯)と同様に処罰される。自分の手を汚さなくても、人を利用して罪を犯せば事実上罪を犯した本人として罰せらることになる。したがって、正犯は、自らの手で直接に犯罪の構成要件を実現する場合に限られない。
間接正犯は、直接実行行為を行わないにも関わらず正犯とされる。これは、直接行為者は何らかの意味で背後の者によって利用される道具と見做すことができ、背後の道具利用者の方が犯罪を行った張本人だと評価できるからである。
間接正犯の成立要件は、
①実行行為((i)他人を道具として利用し、自己の犯罪を実現する意志をもつこと、(ii)被利用者を一方的に支配・利用し、その行為を通じて構成要件的行為を行ったこと)、
②結果、
③因果関係、
④故意、
である。
直接行為者が道具となる類型は、
①故意のない道具、
②強制された道具、
③身分のない故意ある道具、
である。
間接正犯の具体例として、
①医師XがAを殺害する意図を有しており、その意図を知らない看護師Yに指示して、毒物をAに投与させて殺害した場合、
②公務員Xが公務員でないAの妻Yに指示して、職務上の取引がある会社役員からの賄賂を受け取らせた場合、
③親Xが自らの子供Yに指示して窃盗を行わせた場合、
がある。
一般的には、是非善悪の判断能力がある人を唆して(強制ではない)窃盗等の犯罪行為を実行させても、道具のように利用したとはいえないため、間接正犯は成立しない。是非善悪の判断能力があれば、窃盗が悪いことであると判断し、窃盗をやめようとする意思・判断能力を持てるからである。
●参考文献
・佐久間修・橋本正博・上嶌一高(著)『刑法基本講義 総論・各論 第3版』(有斐閣,2019)
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