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私が尊敬してやまない、スターなスーパーマーケター3+1人

広告会社で約30年過ごし、事業会社には50歳を越えてから飛び込んだ新米マーケターとして、その仕事や言説に深く納得し、思考を尊敬するマーケターが3人いる。
まあ、一般的にも有名な方々なので、普通の感想になるが、私の思考や方向の傾向と対策的な。

ファミマ足立光氏

言わずと知れた個性の強い足立氏。
マクドのV字回復時期に手掛けられた施策、ブランドの勢いは凄かった。
マーコムがメインではなく、事業の根幹、商品開発や店舗、インターナルの対応など、オールラウンドな領域で組み立てられた、コミュニケーションも含む全方位のブランドによるカスタマーエクスペリエンスは、見事に尽きる。

マーケティングの本分、ビジネスの成功を実現する力は並大抵の物ではない、と思う。


講演を何回かお聞きしただけだが、飄々としながら、奇を衒わない王道でシンプルな話は聞いているだけで力になる。
その上で、楽しい事を重要視していると語る事も好感だ。

ファミマに入社されてからの、外に出る全ての物事、顧客に触れる全ての物を必ず足立氏がチェックするという就任時のリクエスト、痺れる。いくつもの理由からマーケティングヘッドが行うべき事でありながら、実現の難しい事を飄々と実施されているのは、素晴らしい。

ヘンケルでは予算の無いブランドだから、広告ではなくそれ以外の全ての機会、点でブランドを発信する姿勢、自分自身も発信者としてあらゆる場所に顔を出していたという行動力、小規模な事業会社のマーケティング責任者に転職してからは、常に心がけてはいるが、簡単には実現できるものでなく、改めて尊敬の念が深まる。

シンプルだが難しい事を、飄々と少しやんちゃに語りながら、カスタマーに楽しいブランド体験を提供して、ビジネスを成功に導いていく。
私の理想のマーケターだ。


元ロート西口一希氏

言わずと知れたn=1、9セグメントの西口氏。

マーケター必読の名著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」で紹介されている9セグメントとn=1マーケティングは、広告会社のAEとしてグルインや定量調査の結果を見るたびに言語化できずモヤモヤしていた生活者の捉え方を、綺麗に説明してくれていて、これだよと感極まって泣きそうになった。
肌感として、定量のデータより一人の深い理解、でもデプスインタビューでモデレーターが引き出すような教科書的だったりいかにもストラテスタッフが喜びそうなインサイトてはなく、生活者として意識していない欲求や不満を汲み取り理解する事の重要性、その手法。一字一句がためになる本だ。


西口氏はCM総研の授賞式でお見かけした際のスマニューでの、マーケティング活動の話、CM施策に適用していた9セグメンテーションの独自性の解釈に触れたコメントが興味深く、著作を読んで、一発で信者になった。

生活者の心理と動機を感覚的に深く見つけていく分析とあわせて、画期的なターゲティングメソッド9セグメントはどこまでもクールだ。
あまりにもシンプルなので、一度説明を聞き理解してしまうと、ずっと昔からこの手法を知っていて、これ以外は役不足に感じてしまう、奇跡のメソッドだ。
現在の暗号資産取引所のマーケティング施策でもこっそりと採用しデータを纏めて分析しているが、残念ながらその後活かす機会を作れていない。

感覚と理性、両方を深く極めながらバランスをとるマーケティング手法は、他に替えがない。
この先永遠に使っていけるメソッドを形にして、誰にでも使えるように本として発表している西口氏は、尊敬に値するマーケターだ。単純にファンです。


ラクスル田部正樹氏

3人目は、ラクスル、ノバセルのセミナー集客バナーのデジタル広告でお馴染みの田部氏だ。

10年ほど前DY&Rで、デイリーケア用品のクライアントに、巨大他店からの扱い奪取を目的に、オンオフ統合型マーケティング手法MMM(マーケティング・ミックス・モデル)を必死に提案していた。当時はアジアでコカ・コーラやP&Gが採用してバジェットの効率的な投資が可能になったと話題になっていて、国内ではあまり取り入れられてあない手法だった。クライアント社長にもプレゼンし理解してもらえたが、当時はプランニングの予算として数百万、データの蓄積と分析に一年近くが必要と言われていて、採用はされなかった。

そんなMMM的な、テレビCMとオンライン広告の効果的な投資、最適な組み合わせをラクスルの実業務の中で大規模広告会社と組む事なく実践し、短期間でビジネスの結果に繋がる統合型マーケティングのメソッドを形にしたのが、田部氏だ。
提案の資料や概要を知るにつけ、当時とのスピード感や費用感の違いには、隔世の感がある。

さらに田部氏が凄いのは、そのメソッドを新規ビジネスとして提供する会社を作り、最前線でセールスされている事だ。
ラクスルを急速に拡大させたメソッドをベースに、商品として提供する事、本人自ら語る事のリアルな説得力と力強さは、その手法自体がすでに一つのメソッド、マーケティング施策だ。


田部氏は前述の足立氏、西口氏以上に語り口がシンプルで分かりやすい。無駄な説明や余談、言い訳がない。USPが明確なサービスと言う特性を除いても、頭の中が明確に整理され何を話すべきかを的確に把握できている人だと強く感じる話し方だ。
レトリックや小手先に走り勝ちな自分の傾向を反省する。ストイックな語りは単純に格好良い。


+1 シャトレーゼ中島史郎氏

他の3名とは異なり、業界メディアやセミナーなどへの登壇の少ないマーケターだが、この数年のシャトレーゼのマーケティングを担って、存在感を高めている影の立役者が中島氏だ。
スーパーだが、スターではまだない、と言ったら怒られるか?!

ジョブチューンやつぶれない店などバラエティー番組、WBSやカンブリア宮殿などテレ東系情報番組などでの、商品や企業の露出は、ほぼ中島氏の仕込みだ。

足立氏のヘンケル同様の広告予算が0と言う厳しい環境の中で、ブランドを訴求し価値を高め、ビジネスを拡大していく手法としてメディアを活用していく。
王道ながらも、丁寧でキメ細やかな情報発信は、中島氏らしい仕事だと思う。

中島氏は、DY&R時のAE部門の上司だった。当時は航空会社のグローバルキャンペーンなどを主に担当されていて、一緒に担当したのはグローバル食品コングロマリットのミネラルウォーターのグローバルアカウントでのコミュニケーション活動だ。
大友克洋氏の原画を元にしたスタジオ4℃制作のアニメーションを使った全国キャンペーンは、全世界で採用されている広告主実施の広告好感度プレ調査では、日本ブランチ史上最高のスコアを叩き出したりした、広告会社らしい楽しい仕事だった。
認知訴求は高かったが、商品が売れずビジネスとしての結果は大きく出せなかったのが未だに残念でならない。
当時の総合コミュニケーションへの志向やクールジャパンへの愛など、今の活動とは少し異なる部分もあるが、外資系仕込みの冷静な戦略と、ここぞと強い拘りと粘りはさらに強烈になっている。
PR関連の取材でネットメディアでも紹介される機会も増えているので、ぜひ今後注目していて欲しい。


(余談・読み飛ばしてかまいません。愚痴的なチラウラです) 一つだけ、ほんの一つだけ言わせてもらえれば、ロゴのデザインをなぜ彼に依頼してしまったのか…
超がつく有名クリエイターではあるが、個人的には彼の仕事はそこまでの物ではないと思う。分かりやすいし、周りも高額なギャラの説明もしやすいけど、疑問は残る。セブンイレブンのコーヒーマシーンが良い例だ。
こんな事言ったら、金田はやっぱり分かってないな、有名クリエイターへの偏見強すぎだと、中島さんには怒られるだろうが、あくまでも個人的な感想だと笑って流して欲しいが、口にはしたかった。

(追記) 納得の理由あり


記事を書いた後、中島氏と話をする幸運に恵まれた。
その中で、デザイナーアサインの理由を伺う事ができた。腑に落ちるとはこういう事か!!
また、デザイナーのブランド力を逆に活用すると言う視点に気づいていなかった自分を恥ずかしいと思う。
著名デザイナーのブランドによるPR効果は費用以上に大きいし、このデザイナー以外にここまでのポテンシャルを持つ存在は確かにいない。
中島氏には失礼な文章を書いてしまっていたが、自分の恥を戒める意味も含めて、削除せずに残しておきます。
さらにもうひとつ、お名前の漢字を間違えてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

今さら紹介するまでもないスゴい人たち

著名も著名、スーパーマーケターばかりなので、このnote独自の情報はないが、私の偏愛が伝われば嬉しい。

2/3+1が、P&Gマフィアなのはご愛敬だ。どうしても目立つマーケターは、彼らになってしまうし、強いメソッドを持ってビジネスを成功に導いていくプロなので、しょうがない。
もちろん実際には、派手ではなく、目立つ事なく日常的にマーケティング活動をされている企業内のマーケターの方が数は多く、スターではないが隠れたスーパーマーケターなのは承知している。
そういう「普通」の有能なマーケターのおかげで、刺激的だったり、独創的だったり、消費者の心を静かに確実につかんだりする様々な施策や製品がよの中に登場し、毎日を面白く、有意義に、楽しくしてくれている。

事業会社のマーケターとしては、ひょっ子の私は、スーパースターマーケターに憧れつつ、心や記憶にこっそりと残って消費者マインドを刺激するマーケティング施策を実施していきたいと強く思う。

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