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多様性の科学 書評

今回の書評は「多様性の科学」です。

著者マシューサイドは失敗の科学も執筆しているジャーナリストです。
イギリスのジャーナリストで卓球の選手でもあったようです。

タイトルの通り多様性であることの重要性がメインとなっています。

<概要>

なぜ多様性が必要なのか?
多様性を無視して一元的になってしまった組織の失敗事例
多様性がなくなってしまう原因
などの説明や実際の事例が書かれています。

たとえ、頭のいいエリート集団だとしても偏った人たちが集まると視野が狭くなり簡単なことすら見落としてしまうようです

9.11国際テロが発生した時も、CIA組織は超エリート集団でしたがテロを未然に防げませんでした。

ビンラディンからの発信でテロの兆候が見られ、イスラム系には簡単にそのメッセージを受け取れたようですがその文化の知見のないCIAの白人エリートたちには分かりませんでした

同じ文化圏やアイデンティティーを持つ人材が集まった「画一的な組織」であったため、見落としが発生してしまったのです。

この様な事例の他にも、
・イギリスのサッカー協会にサッカーは素人だが他の専門家を集めて戦略を立てたところ成功したこと
・イギリスの人頭税の失敗
・ナチスドイツの暗号解読にクロスワードパズルが得意な人を呼んで解読に成功した
などの実際の例も多く含まれています。

また、なぜ多様性がなくなり、画一的な組織になってしまうのかという原因も説明されています。

エベレストの登山チームや航空業界のパイロットなどの事例で説明されており、権力者に迎合してしまう、というのが原因となっています。

「経験があるから正しい」「リーダーだから正しい」という固定観念が多様な意見を拒絶し、画一的な組織になってしまっているようです。

<感想>

事例も非常に多く取り上げられており、とてもイメージしやすかったです。

多様性のある組織の成功事例や失敗事例があり、画一性組織の罠も書かれています。

組織単位だけでなく個人でも経験や考え方で偏ってしまう危険性も感じました。

多様性の必要性は今に始まったことではなく古くから重要でありもはや自然の摂理のレベルだと考えています。

現代版での書かれ方が中心でしたが、古くは例えば中国唐の時代(7世紀前半位)の皇帝、李世民は「貞観政要」でも同じようなことを書いています。

イエスマンばかりを集めるのではなく、自分と反対意見も臣下から積極的に取り入れるといった多様性受け入れた内容です。

中国の時代でも唐は300年と長く続いておりその一つの要因として臣下の反対意見も積極的に取り入れたというのがあるのではないでしょうか。

自然界でも多様性は前提条件ともなっています。
食物連鎖なども多様な生態系があってこその自然の摂理ですよね。

また、今回の書籍に近い本で「RANGE」という本があります。

知識や経験の幅が思わぬところで役に立つという様な内容です。

本には書かれていませんが例えばジョブズの「Connecting the dots」や(カリグラフィーという西洋書道とマッキントッシュの融合の話し)ダヴィンチのモナリザは光の屈折を研究があって生まれたなど他との知識経験と融合が新しいものを生むとしています。

様々な角度から考えることで新たな発見があるとしています。

この考え方はクリティカルシンキングとも言われています。

批判的思考といって多様な角度から物事を考えることです。

本書ではこれらのことやクリティカルシンキングについての話はありませんが、繋がっていると思います。

多様な意見や考え方を取り入れることで人や組織は進化していきます。

かなり奥が深くここだけでは語りつくせないのでまた別の機会にこのテーマについて書けたらと思います。

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