作品紹介:藤娘
以前、「無理やり描き終える」というタイトルでご紹介した《藤娘》という作品ですが、グループ展に応募したところ審査が通ったので、めでたく来月、東京のホテルにて展示されることとなりました。
また詳細が分かりましたら共有させていただきますが、ちょっとだけ手も加えたので、改めてこの作品の紹介をしてみようと思います。
「藤娘」といえば、日本舞踊の中でも最も有名な演目のひとつでしょう。
大きな藤を背景に可憐な藤の精が踊るという演目です。
元々、「大津絵」と呼ばれる民族絵画の画題に、黒の塗り笠に藤模様の着物を着て、藤の枝を担ぐというものがありました。
それを元に絵から出てきた娘が踊るという趣向の五変化ものだったのが、昭和入って六代目尾上菊五郎が、藤の精という設定にして、「藤娘」だけを踊ったのが今に伝わっているようです。
個人的に、黒の塗り笠に、黒い着物、そして藤の花を担いでいるという姿がものすごく好きで、舞台を拝見するたびにその艶やかさにうっとりしてしまいます。
藤の花が好き、というのもあるかもしれませんが……
そんな「藤娘」の演目ですが、実は日本舞踊を長くお稽古しているのに、1回も踊ったことがありません!
「藤娘」の中のいくつかの曲はお稽古したことがあったり、他の人がお稽古しているのを横で一緒に踊らせてもらったりしたことはありますが、全曲通してお稽古したり、ましてや舞台で踊ったこともないのです。
あんなにも衣装に憧れているのに……
ご縁がなかったとしか言いようがないのですが、昔はあの可憐なおっとりとした踊りが苦手だったんです(今もどちらかという苦手なんですが)。自分の性に合っていない気がして、おいそれとあの衣装を着れないなーなんて思っていました。
今考えると、挑戦してみればよかったなと思うのですが。
そんなわけで、自分の憧れもこめてこの作品を制作しました。
「藤娘」の可憐さが伝わっていると嬉しいです。