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ビートたけしの運転手のゴーストライターの小説

 どうも、こぞるです。
 本日ご紹介する本は、重松清先生の『流星ワゴン』です。2015年に半沢スタッフ再集結!って煽りでドラマ化もされている作品なので、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
 私は、重松清先生といえば、子供の頃に国語の教科書で読んだ『カレーライス』のイメージが強いのですが、その活躍は幅広く、雑誌記者に作詞家、ゲームのシナリオまで、書き物の仕事は全てやっているのではないかというほどです。その仕事の中にはゴーストライターも含まれており、『たけしー・ドライバー―秋山見学者のトホホ青春記 』というビートたけしの運転手のエッセイを書いていたという公然の秘密があったりもします。

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 今回、記事上部の素敵なイラストを黄色ネジさんに書いていただきました。黄色ネジさんが毎日イラストを更新されている素敵なnoteは[こちら]です。ワゴンの一番後ろに乗っている三匹は、黄色ネジさんのオリジナルキャラクターを模したものだと思われます。その真の姿も是非ご覧ください。
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ー作品内容ー
 死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか――? 

人生の岐路に立ち戻れるとして

 今、野球のメジャーリーグで活躍されているダルビッシュ有という投手がいるのですが、その方がテレビのインタビューでこのようなことをおっしゃっていました。

これ僕の考え方ですけど、自分が40歳になって要するにクビになって何も仕事が無いって状態になろうと。頭の中で。で、なって、そこに自分の前に神様が現れて、「一回だけチャンスをあげるから20歳の時に戻っていいよ」って言われたら、みんな戻って絶対努力するじゃないですか。
それでいま戻ってきた、東京ドームホテルに、っていうことにしようと。
それからすごい、やんなきゃやばい、やんないとまた同じことになる、と思い込んで。

 実際にこれで素晴らしい結果を出しているのですから、すごいなと思うのですが、思い込んだからといってできる人というのは、やはりそう多くはないのではないかと思います。
 それどころか、もし奇跡が起きて過去に戻れたとして、それで本当に本気になれる人って、どのぐらいいるのでしょうか
 私は、多分無理です。最初の少しぐらいなら頑張るかもしれませんが、それが長期間になってしまうと、結局は元の人生と同じく怠惰な人間に戻るような気がします。

 この本の主人公である38歳の一雄も似た部分があるのではないかと勝手に思っています。
 しかし、それではドラマにならず、なんとも悲しい物語になるところを、この本のいいところは、過去に戻って行動を起こしたところで、自分以外にはほとんどなんの影響もなく、現在は変わらないというところにあります。
 過去の失敗を取り返したり、償ったりしたところで、現実は好転しない。変わるのは自分の意識だけです。けれど、そんな状況下だからこそ、動ける、変われることがあります。

自分と同い年の親

 会ったことある人いますか?いないですよね。自分と同じ歳や、それ以上に若い父親というのは、写真で見ただけでも、なんだか違和感を感じます。 
 私は私の記憶の中にある父の年齢に達したことがないため、感じたことはありませんが、もし、そう(30代後半かな?)なったらこの感情はきっとより大きいものになるのだろうなと思います。

 主人公の一雄は父親と仲違いをしているのですが、ふとした時に私と同じ年の父であれば、このようなときにどうするのだろうか、こんなことにはならないのだろうかと考えます。
 『クレイジー・ジャック』の紹介文でも似たようなことを書きましたが、大人になってから、大人として1対1の関係性で親と接する時間というのは、楽しいかどうかは別にして、自分に対して何かしらの成長を促してくれるものではないかと思わされます。

愉快な運転手たち

 それから、今作を語る上で外せない登場人物として橋本さん親子が挙げられます。
 本当であれば一雄と一雄の息子と同い年だったはずの彼らは、5年前に交通事故で亡くなった、言わば幽霊です。しかし、それぞれに抱えたものはもちろん有るものの、普段はそれをおくびにも出さず、明るく語りかけてくる橋本さん親子。
 特に、その息子である健太くんの明るい性格は、主人公やその家族が抱える問題の重たさや、幾度も目を背けたくなるような後悔から読者を救ってくれます。
 本当にいてくれてよかった。年々、親子の諍いという攻撃への防御力が弱まっています。

さいごに

 「プロポーズ大作戦」や「ドリーム☆アゲイン」といったドラマもあるように、人生をやり直そうとする作品は多くありますが、結局、大きく変わるのは自分でしかないといったところに強いテーマを置いているのが今作品。
 一雄の変化した部分としていない部分、そしてこれから変わるであろう部分と結局変わらないであろう部分。エンディング後にも思いを馳せて、自分から動かなきゃと思わせてくれる作品となっております。
 ぜひ、お手に取ってみてください。

 そして、重ねてになりますが、黄色ネジさん、素敵なイラストありがとうございました。


それでは


※今作にはベッドシーンが描かれております。苦手な方はご注意ください。



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