言い続けて行く事、行い続けていく事
ふとんを作る職人になって17年。
「もう」と感じるか、「まだ」かと感じるかはそれぞれだが、僕の中ではどちらでもない。
大した思い描くビジョンもなく、目の前にある事ひたすらやってきた17年。
色々な事をやらせてもらったし、考えさせてもらった。
家業であるふとん屋を継ぐと決めた時、僕は思った事がある
カッコいいふとん屋になる
と。
周りにも言っていた。
サラリーマンの僕は会社を辞める時に大きな大義が必要だと思っていた。
就職氷河期に上場していた電器メーカーを辞める奴なんてロクな奴じゃないと思うし、それなりに覚悟を周りに見せる事も必要だと思っていた。
さて、そんな20代の若造がカッコいいふとん屋になると言えば、
はっ?何言ってんの?
となるわけで、当たり前だ。
でもカッコいいとはとても抽象的で分かりづらいのである。
それは人それぞれという事なんだが、僕にとってかっこいい布団とはプロダクト的にありか無しかとという事だ。
言葉にはし難いが、何か良いなぁと感じてもらう事だ。
勿論ふとん屋だけに普通の寝具も作る。
それは僕の生業だから当たり前だが、その技術を使い新たなるモノづくりが僕にとってカッコ良かったりするわけなのです。
しかしそんな事言っても、技術が大した事なければ誰も相手にはしてくれない。しかも親父が日本一になってると、
「お父さんが凄くて、君は日本一の息子さんなんだよ」
と言われる。現に何度も言われた。
まぁ事実なので、言い返す事も出来ないので、とりあえず目標値は日本一(技能グランプリで優勝)になる事だった。
晴れて日本一になった僕は何ができるかと思っていた。
そんな時に数人からあるプロダクトを作って欲しいと言われた。
バタフライスツールに使う座布団だ。
勿論知っている。そもそも職人になる前にpenに柳宗理のファブリックで作ってあるクッションを見て、こんな座布団作ってみたいと思ったくらいだ(この時はクッションも座布団も区別がつかなった・・・)
それから何度か作り、そんな時にholkの山本さんから、作った生地でバタフライスツール用の座布団を作って欲しいと依頼があった。
あれから9年が経ち、様々な経験を積んでまた山本さんの生地でバタフライスツール用の座布団を作る事に。
岡山県の牛窓にある御茶屋跡で展示をする為だ。
図録デザイン研究所の鈴木さんから依頼を受けて僕は自分の出来る事をし、写真を撮り、送った。
良い仕上がりになった。
バタフライスツールの曲線と座布団の曲線が相まって、なんとも素晴らしいのだと。
日本のデザイナーが作ったスツールに日本の座布団が合わない訳がないと思った。
これが僕の求めていたプロダクト的にカッコいいという事なんだと。
そして休日を利用して、御茶屋跡で実演も行った。
暖かな陽気だったので、外での実演を提案した。
即席の会場だったが、僕にとっては充分だった。
以前ロンドンで実演した時に、Chelsea Physic Gardenで即席に実演会場を作り、仕立てたこともあった。
御茶屋跡では以前YAECAのカディを使った「白い座布団」を製作した。
この座布団の製作秘話はまたの機会にしたいと思う。
御茶屋跡の末藤さんがいなければYAECAと繋がることも出来なかった。
実際にYAECAのお店でも仕立てをデザイナーにみてもらった事も。
誰と出会い、誰が繋げてくれるかはやはりとても重要だと思う。
自分なりにかっこいいを見つける事、それを言い続け、行うことで新たなコトが生まれてくるのだといつも思うのです。
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