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また再会したい、夢を掴んだその後で。

 少し暑くなってきて、何となく生温い夜。
そういえば、そろそろ彼の誕生日だったなと。
久しぶりに、思い出の中から彼を呼び出してみたいと思う。

 もう10年ほど前になる。高校生の頃、少しだけ付き合っていた男の子がいた。彼の名前が私の名前に偶然似ていたり、自分の夢に向かって必死で練習している姿も共通するものがあった。ちょっと血の気が多いところもあり、周りからは"怖い人"と勘違いされるような一面もあったけど、そういうところも引っくるめて愛おしく感じていた。彼そのものも本当に大好きだったし、彼と過ごす時間、彼と一緒にいる自分のことも好きだった。

 初めて廊下で出会った時、なんとなくこれが運命なんじゃないかと思えた。漫画のような目に見えるときめき。気だるそうな歩き方、ツンとした表情、ぶっきらぼうな態度。私に対して無関心そうなところ。そう、彼の全てに惹かれた。

 連絡先を交換してからは、毎日のようにメールでやりとりをした。彼がどんなことに熱中しているのか、どんな価値観を持っているのか。彼を少しずつ知るたびに、本当は"真面目な人"なんだというギャップに触れ、彼への気持ちが大きくなっていることに気付いた。

 知り合ってから約1ヶ月で、私たちは付き合い始めた。田舎に住んでいた私たちは、遊びに行く場所もほぼ限られていたけど、私たちのやり方で楽しい時間を過ごしていた。家に遊びに行ったり、自転車を二人乗りして町を巡ったり。都会のような、ディズニーランドとかそういうデートはできないけれど、私たちにとってはこれが幸せだった。

 また、とある日には帰り道にアイスを食べながら、これからの夢について語り合った。とても充実したものだった。
 彼はスノーボードに情熱を注いでいて、私はフルートの練習に励んでいた。「お互いに上を目指して頑張ろうね」と誓い合った日は、今でも心に残っている。

 別れた日のことも、今でも記憶の中で鮮明だ。話し合ってスパッと互いに別々の道を歩むことになったけれど、一緒に過ごした思い出はずっと綺麗な思い出のまま。

 別れてから5年が経ち、私は念願だったソロの全国大会に出場した。また、人伝に、彼もスノーボードの全国大会に出場したことを知った。別れた後も、あの日の約束を胸に、夢に向かって努力し続けた。ずっと努力を止めなかったのは、紛れもなく彼との過ごした時間や、約束のおかげだった。彼もまた、私と同じように努力を止めず、一緒に過ごした日を思い出してくれていたらいいなと願った。

 それからさらに時間が経ち、私は大人になった。10年経った今でも、ふとした瞬間に彼と過ごした日のことを思い出す。今はどんな新しい夢を追っているのかな。叶えているのかな。どこで何をしているのかな、と。

 直接会うことはもうないけれど、彼を心から応援する気持ちは今もこれからもずっと変わらない。励まし合い、笑い合ったあの日のまま、私の中に生きているから。

「一緒に頑張ろうな」

 あの日の約束がまだ彼の中に生きていて、どこかで繋がっていると信じながら、これからも彼の夢を応援し、私自身も頑張り続けたいと思っている。

#忘れられない恋物語 #note初心者

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