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リュック3兄弟

その恐怖を想像し始めたのは子どもの頃でした。

お年寄りが物事に動じないのは何故だろう?

色々と経験が豊富だから?

長く続くこれからの人生…。

どれ程の痛みや恐怖が待っているというのだろう?

それらを乗り越えないと、年寄りには成れないのだろうか?



その長年の問いに対する答えが、

私に襲って来ました。




ーその現象は25才くらいに始まりました。ー

当時、私は古い民家を借りて一人暮らしをしておりました。

風が吹くと窓ガラスがガタガタ言うような家です。

「あれ? おかしいな…。」

自分のイメージしていた己の動きと現実の動きが
乖離し、思うように自分の身体をコントロールできません…。

「最近、運動不足やからな。少しは運動せんと。」と日頃のふせっせいを反省します。


その時、ろうかのミシミシと忍び寄る足音に私は気づいていませんでした。




ー30代、子育てが始まりー

やがて、長女が生まれ子育てをして行く中で今までに無かった考えがストンと腑に落ちます。

長女の落ち着いた幼稚園児と思えない立ち振る舞いに、

「あ、この子はきっと私より長く生きてる。」という突拍子もない考えが生まれました。


輪廻転生。


生まれながらにして、才能に差があるのは何故か。それはもうすでに経験しているからなんだ。

別に不平等な世の中じゃないんです。

「天は二物を与えずなんて嘘だー!!」

そりゃそうです。きっとその人は自分で手に入れてきたんです。

いわゆる前世で。


こればっかりは、理論的に否定しようにも証拠固めができない。悪魔の証明です。

現実の法廷で『サンタクロースがいない』という事を証明出来なかった話と同じです。

生まれる前の記憶が無いからと言って

無から生まれて無に帰るという証明にはならない。

記憶喪失の人の、記憶を失う以前は生きていなかったんだと言っているようなもの、人権侵害も良いところです。


非科学的だ!? 

身体が無いから無じゃないか!?

生物を構成すると言われる物質を解明して
それらを集めても

命そのものは新しく作り出せないレベルの科学で

見えないものを非科学的だなんだと否定する方が、野蛮で非科学的ではないですか?

分からないことを科学的に追求し説明つけるのが科学だと思います。


ー星の王子さまのきつぬの言葉が想起されました。


「おいらのひみつだけど、

すっごくかんたんなことなんだ。

心でなくちゃ、よくみえない。

もののなかみは、

目では見えないってこと。」ー



ーそして40代、身体に異変が起こりますー

気づいたのはトイレの中でした。

なんか、暗いな。

白壁をジッと見たり、目を開いたり閉じたりすると、どうやら左目の視界のど真ん中に丸い影があります。

右目で視力を補っていたようで普通に見ている分には気づきませんでした。

左右見比べると明度が明らかに違います。

視力そのものが落ちた事もあり、特に暗がりで錯覚を起こすようになります。

夜道、看板を見て人だと思い全く動かないので不審に思います。

白っぽい丸い物があると人の顔に見えます。

幽霊かといちいち驚いていたらキリがありません。


しかし、左目の丸い影が気になら無くなった頃、
右目に同じ現象が起こります。

さすがに眼科に行き検査してもらいました。



診断結果は…


『老化(ろうか)です。』



眼科の廊下でがーん😱か。


年寄りが動じなくなるのは、
自分はこういう人間だ、こうあるべきと言う自我、欲望を捨てて行く引き算の余生だから。

何か起こったとして、自分一人に起こったことなど些細なこと。

必要の無いものは無くても困らない。

最終的には肉体さえも…。

悟りを開くのには苦労や恐怖体験は必要ありません。(これが悟りか分かりませんし、まだまだ欲を捨てきれぬ実態伴わない若造ですがストンと腑に落ちたので仕方ありません。)

昨日、通勤途中、向かい側の歩道をリュックを背負ってタタタタと急ぎ足で歩く白髪混じりのおじさんを見ました。

少し行くと別の白髪混じりのおじさんが私の前を横切り、リュックおじさんの後を追います。リュックおじさん追加です。

何を隠そう、私も
リュックを背負っています。


ー3兄弟みたいです。ー


リュック3兄弟~♪


腰に刺さった旦那、旦那♪




口ずさみました。


昔なら、絶対にふたりを避けて違う道を探しただろうな…。






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とうちゃんきりん
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