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ゴジラ -1.0

映画って観ている瞬間もですが、
なんか最後に良いものを持ち帰っていきたいじゃないですか。
前向きな気持ちでも爽快感でも推しの笑顔でも何でも良いのでね。

でも、今回は映画の世界から持ち帰れたものがあまりにも微妙な感触でございました。大ヒット作品なんですけどね。

なんてったって、ゴジラだったんですけどね。


予告編はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=x7ythIm0834

先にお伝えしておくと、今回たいしたネタバレはしないので安心して読んでください。
ネタバレうんぬんの映画ではないですし、後述しますがストーリーについては語るところがあまりないです。そこがどうこう、といった映画ではなかった。

まあ、一言で表してしまうと、

今の日本で大きな会社が邦画を作ったらこうなるよね


なんというか、下手な産業構造が生み出した映画。もったいないよ。


俳優の演技はよい。普通にとても良い。
このキャストなら、これくらいの出力はしてくれるだろう、という期待通りに出してくれます。

場面の演技が良いのは確かなので、キャストの演技が見たかった人の需要は満たしたんじゃなかろうか。

ま~そのぶん、勿体ないよな、と思うところが随所にあるわけで、それを語っていきましょう。
このnoteは、良いところを語るだけの、当たり障りのないものは目指してませんのでね。


ではまず一つ目として、映像から。

邦画とハリウッドで比べたときに何で負けるかって、CGにかける金と再現度じゃないですか。
要は、デカくて派手なものにかける圧倒的な金と物量が足りない。しょうがないですけどね。
だって、もう大きな産業になってしまったら、ロマンに金をかけるほどの心の余裕が出る国民性じゃないでしょう、日本って。

でも、それにしても、たいして目が肥えていない自分も目が浮ついてしまうくらいには、VFXのクオリティーが実写部分に負けすぎ。
湯気が良くても雪が陳腐すぎたり、演技が良くても背景が浮いたりして、耳なら高低差でキーンなってますわ。

先述したように俳優は良いのに、まぁとにかく馴染まない。例えるなら、リアル志向の3Dゲームを任天堂ハードでやっている感触。
あ~~もったいない。

とにかく終始「苦手なところで勝負するな!!」とツッコみたくなる。
再現に金がかかるセットを組むならば本気で組んでほしいし、VFXを使うなら細部の物理的な動きの違和感もないくらいに作りこんでほしいわけですが、ゴジラにやられる人が「スポーン!」って飛んでくわ、大きなタンクは平行移動みたいに滑っていくわ、舟のセットが背景と馴染まない動きをするわといった始末。

あと、どれを使うかもはっきりさせてほしかったですね。
VFXバリバリでやるのか、専用のセットを作るのか、ミニチュアを使った特撮に寄せた撮影手法にするのか。
半端に混在すると目が違和感に持っていかれるんですよ。やりたいことをやるのか、指示されたことをやるのかはっきりさせてほしい。

鑑賞体験のノイズになるくらいには場面ごとの映像差が激しく、映像が上質な映画とは言えなかったですね。


で、話は変わって、もったいないポイントの二つ目はこだわりの無さ、です。

映画通の方であれば、「監督・脚本・VFX 山崎貴」の時点で想像がつくと思いますが、その想像の通りです。

脚本・ストーリー進行に関しても、まぁこんなものよね、という感触です。
この監督はこうだよな~と思うくらいには、のっぺりとしている。
良い悪いを語るようなものではなく「文句を言うほどスットンキョウでもないけど、良いとは思えない」って感じでした。

繋ぎは雑だが、映像と流れをなんとなく追えば気持ちよくなれるシーンを作って飽きさせない感じ。はっきり言うと、『ALWAYS 三丁目の夕日』からも『永遠の0』から、進歩も成長も変化も退化もない
特に『永遠の0』からは全く変わってないと言って過言じゃないです。映画体験としてはあれの焼き増しとしか感じなかった。

派手さのいらない日常シーンでの人間の魅せ方は面白いし、シーンに振ると実写で良い映像は作るんですけどね。なんでこの人にVFXをやらせるのか、僕は未だにわかってないです。本人もやりたいとも思ってないんじゃないの?
なんで浜辺美波に無駄に鉄棒させてんねん。ギャグ?

特徴的じゃないシーンなら、無駄にVFXが必要になるシーンを組んで金を使わなくて良いんじゃないですかね。
カット割り→予算を組む→映像にかける費用が足りない→細かい動き方や効果は妥協!
みたいな流れじゃないですよね? ね?


そして最後の三つ目、もったいないポイントは邦画の産業構造の悪さがモロに出ている点。

場面場面は良いところがある、とは言いましたが、穿った観方をすると、有名な俳優に良いシーンを一つ渡すための構造にも見える。

キャスティングした芸能事務所が綱引きで時間を取り合いでもしたんですか? 有名俳優の作品ポートフォリオでも作ってるんですかね?
やるにしても実力のある無名俳優でやったほうが意義があるだろうに。

特に後半は顕著で、俳優ひとりにフォーカスした良い映像が次々と流れます。画面全体として美しかったり、美意識を感じたり、高度な文脈によって唸るみたいな体験ができませんでした、僕はね。
あくまで個人の感想です。

まぁ・・・日本は組織作りも苦手だし仕方ないんだろうなと思いますけどね。
でも、こんな感じで個々の会社の都合を押し付けまくった委員会が作られて、誰も貧乏くじを引かないどっちつかずを繰り返しているうちに、日本の邦画は弱くなったんだと思いますよ。
佐々木蔵之介のセリフを聴き直すのがよいのでは? 誰かが貧乏くじを引かなアカンくなってるんです、この国が。

そういえば、微妙なVFXも使う時間数の制約とかあるんですかね? それなら逆に微妙すぎる映像の質の切り替わりにも納得が行く気がする。

繰り返しっぽくなりますが、単純に映像作品として見ると、間に入る人間が下手で余計なんだとしか思えないですね。
セクシー田中さんの件でみんな懲りたと思ってますが、テレビに限らず、日本の実写映像づくりの業界構造・システム自体がイビツなんだろうと思いますよ。

マイナー作品で光るものを見る機会は減っていないので、日本人や個々人の技術ではではなく、クリエイター以外を取り巻く産業構造が悪いとしか思えない。

神は細部に宿るし、素晴らしい作品にはヒットには神がかり的な何かが必要ですが、それを生もうとする気概は見えない映画でしたね。

大きな金を半端に動かすから粗が出る。
15億の低予算! とかで盛り上がるの、くだらないので本当にやめてほしいですね。

映画に限らず高品質の売り物って、ニッチに品質や尖りで勝負するか、お金をかけてド派手に勝負するか、じゃないですか?
産業として見たときには「つまらん映画だな」と思ってしまいます。

この作品に神は宿らない。そういう構造じゃない。

北米で売れたらしいですけど・・・映画自体の魅力で成しえた結果とは正直思えないです、ハッキリ言って。
(まぁ、良いもの=売れる、という構造でもないと思いますが)
ついでに、ゴジラである必然性は特に感じなかったことも付け加えておきます。


全体を通しての所感ですが、

この監督の映画はしばらく見なくていいかな。

でした。
お涙頂戴だろうが、戦争が題材だろうが、日本の顔のコンテンツを扱っていようが、微妙なものは微妙。
そういう判断もしないと、逆に良い作品に申し訳ないですから。

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