挨拶の効果。
TUGBOATの岡康道さんの訃報。
悲しいです。
かつて何度か取材させていただいた。電通からの独立も、つくられる広告も、語られる内容も、スーツ姿も、全部かっこよくて、ずっと憧れていました。
印象に残っていることの一つが、挨拶です。
「こんにちはー!!」
今から15年ほど前、岡さんへの初取材のとき。
TUGBOATさんの会議室で待っていたら、岡さんはドアを開けるなり、笑顔で、大きな声で挨拶しながら颯爽と入ってきました。
その瞬間、場の空気が変わった。ぱっと明るくなり、つられて私やカメラマンさんも、いつもよりも大きな声で「こんにちは!」と笑顔で挨拶した。
なんか今日は楽しい取材になりそう!
岡さんとは初対面だったので、緊張していました。だけど、変な力みがとれて気が楽になったのを覚えています。
プレゼンが常だった岡さんにとっては、きっといつもと変わらぬ挨拶だったんだろうな。
そのとき以来、私は岡さんを見習い、今も取材や打ち合わせで人と会ったら、まず「こんにちは!」と挨拶するようにしています。
挨拶の仕方ひとつで、相手の心をつかんだり、前向きな気分にさせることができる。
挨拶しかしてないのに「なんかいい人そう」と思えたりもする。
要するに、挨拶は自分を印象づけるコミュニケーションでもあり、意識すべき大切なことだと、今こうして書きながらあらめて思いました。
挨拶は基本ですね、ほんと。
取材では面白おかしく、何かに忖度などせず語ってくださり、書けないこともたくさんお聞きしました。毎回、笑いが絶えない取材で楽しかった。
そういえば、ワークスペースで取材をしていると、会議室から大きな笑い声が聞こえてくることもありました。「なんだか部室みたいなオフィスでしょ」なんて話されていたことも、今思い出した。
当時の広告業界の課題も、色々教えていただいた。
たとえば、メーカーは他社とは違うサービスや商品の開発に全力で取り組み、やっとの思いで完成させたものなのに、
そのテレビCMは「あの企業のCMに出演していたあのタレントがいい」と急に「みんなと同じ」にしたがる矛盾とか、
フィービジネスは海外では当たり前で、海外視察をきっかけに独立を決めたこと。クリエイティブの価値を正当に評価してもらうためにも、報酬制度は見直されるべきという話とか。
広告業界のトップクリエイターである岡さんから直接聞けるなんて。今思うと贅沢ですね。
フリーになったばかりで駆け出しの頃に、とても貴重な経験を積ませて頂いた。
ずっと忘れません。ありがとうございました。