「なんかダサい」は、奥深い。
広告賞を受賞して喜んでいた。だけど、広告本来の目的である「売り上げ」は伸びなかった。広告賞を受賞するために仕事をしていた自分って、なんかダサいなって思った。
少し前、博報堂のクリエイティブディレクター、河西智彦さんにインタビューしたときに聞いたことです。
大阪の遊園地「ひらかたパーク」のテレビCMを手がけ、広告賞を受賞し、「広告業界」で話題になりました。しかし、残念なことに来場者は伸びず。それ以来、河西さんは自らを「売り上げ至上主義」と称し、面白くて売り上げも伸ばす広告を目指している、というお話でした。
その後、ひらかたパークの広告はV6の岡田くんが出演する新シリーズにリニューアル。河西さんの狙い通り、来場者を伸ばしています。
私は「なんかダサい」という言葉に、とても心ひかれました。自分のことを「なんかダサい」と言った、河西さんは強くてカッコイイなぁと、話を聞きながら思っていました。
それから「なんかダサい」という表現について、考えてみました。
意識高すぎて「かっこよすぎる」と、逆に「なんかダサかったり」するし、「なんかダサい」ほうが、安心感があっていいこともある。「なんかダサい」って実は奥深い。
そんな色々な「なんかダサい」ことに気づくためには、色々と見たり知ったりするしかないと思いました。「視野を広げる」より、もっと地道な感じ。
SNSをチェックしたり、テレビやテレビCM、YouTube、ネトフリのオリジナルドラマ、映画などを見たり、新聞や本を読んだり、街をぶらぶらしたり、人と会って話を聞いたり。
見ようとしないと、知ろうとしないとね。自分のことはもちろん、世の中の流れとかムードとか。解像度を上げたり下げたりしながら。私は、メディアに関わる仕事をしているので、必要なことだと思っています。
河西さんのインタビューは、朝日新聞社メディアビジネス局が運営する「広告朝日」の「クリエーターインタビュー」というコーナーに掲載されています。ここのコーナーを担当するようになったのは、2010年から。10年かぁ。
ちなみに記事では「なんかダサいと思った」は「愕然とした」という表現にしたはず。「なんかダサい」のままでも良かったかな。
河西さんの著書「逆境をアイデアに変える企画術」には、ひらかたパークの広告制作について詳しく書かれています。