
うしろ髪ひいておき隊 〜サンクコスト設計の話
今日は、経営者が意思決定をする際に足かせとなる「サンクコスト」について、その心理を消費者に対して上手に仕込むことでマーケティングに応用する発想例のご紹介です。
こんにちは。本格スムージー「FICO & POMUM (フィコ・アンド・ポムム)」 代表の西野です。
サンクコストとは?
食べ放題の店に行ったとき、ついついやってしまいがちなのが「食べすぎること」。
最初に食べ放題の固定料金を払ってるんだから、たくさん食べて元を取ってやろうという心理が働きますよね。
しかしこの場合、「食べすぎたことで後で逆に後悔をする」など、えてして幸せな結末に辿り着けないようなケースも多いです。
このように、すでに埋没して回収できない費用が足かせとなってうしろ髪を引いたようになり、冷静な意志決定に影響を及ぼしてしまうことを、マーケティング用語では「サンクコスト」と呼んだりしています。
Sunk Cost = 埋没してしまって回収できないコスト
食べ放題の店で入場料を払ったあとは、その入場料はすでに埋没して回収できないので、入場料は忘れて食べる量を調整したほうが賢明です。
同じような話で、ギャンブルや株の世界でも「損切り」という言葉が存在します。
サンクコストは、「冷静な意思決定に影響を及ぼすので、そのコストはもう忘れてしまって未来のことだけ考えたほうがいい判断ができるよ」という意味合いで語られることが多いのですが、その心理を利用することもできると思います。
僕たちの本格スムージー専門店 「FICO & POMUM JUICE」でも、「サンクコスト心理を応用することでマーケティング施策に活かす」発想で「これは有効だな」と感じた事例がいくつかあったのでご紹介したいと思います。
サンクコスト心理の活用事例 1
「配送料を薄めるためのちょい足し商品」
「Uber Eats などのデリバリーオーダーは、来店客に比べて客単価が高くなる」という傾向があります。 これにはいくつか要因があるのですが、以下のように解釈しています。
1. オプションやサイドメニューを時間をかけて選びやすい。また、選ばれやすい画面遷移やUIになっている。
2. 固定料金である「配送料」がサンクコストとなって、商品自体の追加購入を促しているため。
埋没して回収できない「配送料」を、「どうせ配送料がかかるならついでに他のものも買って少しでも配送に掛かるコストを薄めよう」という消費者心理が働いていると考えられます。
このニーズに応えるために、「スムージーに追加で加えられるオプションや、オーガニックスナックなど、 ¥80〜¥240 代の商品を拡充する・目立つように配置する」という施策が取れます。
(ついつい手を伸ばしてしまうレジ横商品のようなものですね)
サンクコスト心理の活用事例 2
「常にキリの悪いポイント残高」
FICO & POMUM の店頭で配布している「ポイントカード」は、「会員登録」をすることでさまざまな特典が受けられる、二段階構造になっています。
・非会員: 会員登録なしでポイントカードを使うことができる
・アンバサダー会員: 会員登録をして、お得な情報やポイント優待を受けることができる
(※2021年7月、ポイントシステムは「F&Pアプリ」に移行し、ポイントカードの新規発行は終了しました)
事業者側が考えるポイントプログラムの大きなところで、ポイントの「使用単位」があります。登録会員にさまざまな優待を企画する上で、この「使用単位」にも会員/非会員間で優劣をつける設計対象となります。
F&Pのポイント使用単位ルールは、
非会員は「100P単位で使える」
アンバサダー登録会員は「1P単位で使える」です。
つまり非会員は・・・ ポイント残高が299pの場合、
最大200p 使えるけど、99pはカードに残ります。
この設定には、非会員の方は「ポイントがあえてゼロにならないようにして、そのポイント残高でうしろ髪を引いて再来店を促そう」という狙いがあります。
ポイント残高がゼロになって使い切ってしまったら、次にそのカードはゴミ箱に行く選択肢が生まれてしまいます。
些細な点ですが、お客様とのつながりを大事にしていくために、サンクコストを意図的に生み出そう、という努力です。
まとめ
このように、経営者の立場からするとネガティブに働くこともある「サンクコスト」の心理ですが、逆にその心理を上手く利用することでマーケティング施策の武器として設計していくこともできるのではないか、という話でした。
それから、食べ放題の店では食べすぎに注意しましょうね。