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ヒトラーと私は独裁者の病

恋愛の本で出会った、妄想性パーソナリティ障害

愛着障害の関係を調べているとき、岡田尊司先生の
『なぜいつも“似たような人”を
好きになるのか』(青春出版社)を手に取りました。

自分の恋愛傾向を知りたいと思い、
巻末にあるセルフチェックを試したのです。

そこで導き出された結果は「妄想性パーソナリティ」。

これまで、境界性や回避性、依存性など、
自分にはさまざまな生きづらさがあると
自覚していました。

しかし、「妄想性」という言葉には驚き、
さらにその内容を知ったとき、
思わず絶望してしまいました。



妄想性の人間とは、距離を取った方がいい

妄想性パーソナリティ障害とは、
他人への過剰な不信感や疑念を特徴とする
パーソナリティ障害です。

具体的には、明確な根拠がないのに
「攻撃されている」「陥れられている」と感じ、
他人の言動を悪意的に解釈してしまいます。

このため、対人関係が難しくなり、怒りや反撃、
さらには支配的な態度を取ることがあるのです。

主な特徴

  • 他人の何気ない言動を「自分を傷つける意図があるのでは」と考えてしまう。

  • パートナーの浮気を疑うなど、根拠のない心配にとらわれやすい。

  • 小さな出来事を「攻撃された」と感じ、怒りやすくなる。

  • 周囲の人に冷たい印象を与えがちで、距離を置かれることがある。

そして、私を最も驚かせたのは、
このパーソナリティ障害が独裁者に多いという事実でした。

ヒトラー、スターリン、毛沢東ーー。

その名前を目にしたとき、にわかには信じられませんでした。

通常、妄想性の人は自覚症状がないそうです。
事実とは違うことを、
信じ込んでいるから妄想なのであって、
自覚していたら妄想ではないわけですね。

しかし、私には
「めんどくさい人と思われている」
「他人から理由もなく嫌われている」
という感覚がありました。

そのため、「もしかして自分も妄想性
なのではないか」と徐々に受け入れ始めたのです。

とはいえ、
「妄想性の人とはなるべく関わらない方が良い」と
書かれている一文を読んだときはショックでした。

「恋愛どころか、関わらない方がいいと
 言われるほど危険な人物なんだ」と落ち込み、
自分を否定せずにはいられなかったのです。


気づいてみるとあちこちに妄想性が

自分の「妄想性」を意識し始めると、
職場や日常の中にも、似たような言動を
持つ人がいることに気づきました。

最初に「なるほど」と腑に落ちたのは、
職場の同僚の振る舞いを見たときのことです。

同僚は、とにかく「自分が狙われている」と
思い込む傾向がありました。

例えば、チームでの会議中に
他のメンバーが何気なく交わした視線や、

小さなミスの指摘に対して、
「自分だけがターゲットにされている」と
感じるようでした。

後から聞いた話では、
「陰で悪口を言われているに違いない」と
本気で思い込んでいたそうです。

ある日、同僚がこんなことを言いました。
「昨日の資料、あの上司がわざと自分に
 渡さなかったんじゃないかな。
 ミスするように仕向けたとしか思えない。」

その資料は単に、上司が机に置き忘れていただけで、
誰も同僚を陥れようなどとは、していませんでした。

でも、同僚の中では「攻撃された」という
ストーリーが出来上がってしまっていたのです。



妄想性の視点で見た世界

日常の些細な出来事が、すべて
「敵意」や「悪意」に変換されてしまうのです。

その「敵意」に対して反撃するか、
距離を取るかという行動に出る。

私自身も、遠くで談笑している人を見かけて、
「自分を笑っているのかもしれない」と不安になったり、

何も思い当たることがないのに
「嫌われたかもしれない」と感じたり、
したことがありました。

全然、関係ない話をしていたり、
ただ相手が忙しかったりしただけなのに。



本能にすり込む方法は言い聞かせるしかない

妄想性の人が感じる「世界の敵意」は、
実際には自分の内面から生まれているものです。

しかし、それに気づいても、
その感覚を簡単に手放せるわけではありません。

遺伝的な要因も強いとされていますが、
幼少期に親や周囲から責められたり、
細かい点を批判されたりした経験が、
多い人に見られる傾向があるそうです。

こうした記憶は無意識、
つまり本能に近い場所に刻まれているため、
ただ「考えるだけ」では書き替えることが難しいのです。

では、どうすればよいのでしょうか?
私がたどり着いた答えは、
繰り返し「本当は違うかもしれない」と
自分に言い聞かせることです。

例えば、誰かの視線を「攻撃的」と感じたとき、
「本当にそうだろうか?」と問いかける。

それは決して簡単ではありませんが、
「これは自分の妄想かもしれない」と気づくことで、
少しずつ内面に変化が生まれるのを感じています。

このプロセスは長く地道なものです。
けれど、少しずつ「敵意」だと
思っていたものが薄れていく感覚は、
私にとって救いになりました。



変化の先にあるもの

今でも、時折「攻撃されているのでは?」と
感じてしまうことがあります。

それでも、「これは自分の妄想かもしれない」と
立ち止まることができるようになり、
以前よりも冷静に状況を見つめられる瞬間が増えました。

自分の心の癖を理解し、受け入れることで、
他者との関係も少しずつ変わっていくのだと実感しています。

妄想性パーソナリティに限らず、
生きづらさを感じるすべての人が、
自分の心と向き合うことで、
より穏やかな日々を手に入れることができるはずです。

その第一歩は、自分の感情に気づき、
少しずつ行動を変えてみること。

どんな小さな一歩でも、
それが未来を変える力になるのだと思います。

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