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不安を与えない接し方とは


明らかに進行している認知症

 帰郷して間もなく2ヶ月になります。素人目からも明らかに認知症が進行していることを感じます。父も「お前が戻ってから酷くなってる」と同じ印象をもっているようです。私の帰郷が母にとっては大きな環境の変化になったのかもしれません。特にこの3日間、「別人の母」が1日の半分以上「本来の母」を上回っています。
 正直なところ、私は疲弊しています。苛立ちもあります。でも今、反省していることがふたつあるのです。

  1. 母の目を見て話すことが減っている

  2. 「どうせ〜」が前提になっている

「別人の母」の時の目はどこか病的といいますか、表情も硬直して目の焦点が定まっていないように感じます。いい表現ではありませんが、多少恐怖を覚えることさえあるのです。その時の母とのコミュニケーションでは、「どうせ話しても忘れるだろう」「伝えてもわからないだろう」を前提に向き合っている自分がいます。2ヶ月前はそんな感情はありませんでした。
 母の不安感を強めるような私と父の言動は、症状を進行させてしまうことは理解しているのに……。

安心感を与える接し方

 頭ではわかっていても難しいのが介護者の態度。強い口調や怒りを表に出すことは不安を増大させることになります。そこで認知症の方に安心感や安定感を与える接し方を調べてまとめてみました。

1. 穏やかな口調と落ち着いた態度
2. 簡潔でわかりやすい説明
3. 目線を合わせ、笑顔で接する
4. 否定せず、共感を示す
5. 環境の整備
6.適度な距離感と尊厳の保持

• 厚生労働省「認知症ケアのガイドライン」
• 日本認知症学会「認知症の理解とケア」
• 国立長寿医療研究センター「認知症に対する介護者の対応」
• 認知症介護研究・研修センター「認知症介護のための実践ガイドライン」
• 日本アルツハイマー病協会「認知症ケアの手引き」

 厚生労働省の「認知症ケアのガイドライン」では、「穏やかな口調で話し、急かさず、時間をかけて対応すること」が推奨されています。認知症の方は、急かされることにより不安を感じやすくなります。時間に余裕を持った対応が、安心感を与える大切なポイントだそうです。
 やはりありました。「目を合わせる」こと。国立長寿医療研究センターの研究によると、介護者が被介護者と目線を合わせることで、安心感や信頼関係が築かれやすくなると報告されています。私はこの2ヶ月で目を合わす回数明らかに減っています。すぐに改善すべき行動ですね。
 現実的に難しさを感じたのは「4. 否定せず、共感を示す」。認知症介護研究・研修センターのガイドラインでは、否定的な対応は被介護者に不安や恐怖心を与えやすいとされています。時に現実とは異なる話をすることがありますが、否定せず「そうだったんですね」「大変だったね」と共感を示すことが推奨されているそうです。
昨日から今朝にかけての我が家の事件を紹介します。昨日母が自分の下着を持ち出し、父に「彼女の下着でしょ。あんなところにしまいこんで」と詰め寄りました。父は激昂し、すべて庭に投げ捨ててしまったのです。そして今朝、その下着を手に持った母が私のところへ来て、「見て!私の下着よ、これ。お父さんが庭に捨てたのよ」と言うのです。この状況、「そうだったんだね」という対応は本当に相応しいのでしょうか。実際私の対応は完全スルーでした。正しくないのはわかっていますが、「どうせ昨日のことは覚えてないだろう」「説明しても理解できないだろう」と思ったのです。この場合、どう受け答えするのがベストなのでしょうか。
 適度な距離感についても簡単ではない部分もあります。母が通う週2回のデイサービスは、午前中だけですがお互いにとって良いリフレッシュだと期待していました。ところがほぼ毎回、母は帰るなり「(私がいない間に)彼女と会ってたでしょ」「彼女に会うために私をデイサービスに行かせてる」という始末です。残念ながら機嫌良く帰ってきた母をみることはほとんどありません。

できることだけ始めよう

 とはいえ上述した接し方6点すべて、私も父も胸を張ってできてるとは言えません。改善の余地は大いにあります。リラックスできる環境をつくってあげることは、ちょっとした工夫で何かしらできそうです。私自身は、「穏やかな口調と落ち着いた態度」「目線を合わせること」は早速徹底したいと思います。
できる自信はありませんが……
チャレンジしてみます。

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