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独言映像を本人にみせることは有効か



狂気と理性の狭間

 母の独言がはじまって4時間になります。認知症の母の妄想攻撃は毎日数回起きます。父は朝から外出しており、母と二人で留守番。実は初めての状況です。今の正直な気持ちは……
「気が狂いそうです」
独言を止める方法はあるのでしょうか。母の独言につき合わされるといつも思うことがあります。その様子を録画して母に見せてはどうか、と。
 妄想攻撃や独言中は意味がないことは想像できます。理由はコミュニケーションが成立しないからです。こちらの声はほぼ聞こえないのか、認識できないのか、ただ一方的にしゃべり続けるだけです。では、症状が出ていない時にはみせてみては? そう考えるとあまり気が進みません。
 ということで、気分転換にググってみました。

介護者にできることとは

 母に独言中の映像をみせることは有効か。結論はノーです。理由は3つ。

  1. 自己認識力の低下により自分の行動を正しく理解できず、映像をみせても「それは自分ではない」と感じる。

  2. 自分の行動をみせることは、羞恥心や自己否定を引き起こし、症状を悪化させる可能性が高い。

  3. 映像をみせることが新たなトリガーとなり、妄想の内容や攻撃性がエスカレートする。

有効でないことは推測できました。むしろ映像のフィードバックは、私の苛立ちをぶつけるような行為です。まだまだ未熟者です。
「どうすればいいのか」
 以前、「不安を与えない接し方」で安心感を与える行動について書きました。

その記事では国内の資料をまとめましたが、今回は海外に興味深い報告を発見。「アルツハイマー病における妄想やパラノイアの行動への対応方法」を紹介します。

◼︎安心させる言葉をかける
◼︎冷静さを保つ
◼︎何かを行う前に、その手順を説明する
◼︎患者の近くで笑ったり、ささやいたりしない
◼︎事実でないことについて同意しない
◼︎行動ログを使用して、引き金となる要因や発生する時間帯を特定する
◼︎口論しない
◼︎彼らの立場に立って、その世界に入り込む
◼︎盗まれた、または失くしたと思っている物を一緒に探す
◼︎失くしたと思っている物の予備を用意する

Esther Heerema, MSW: Coping With Paranoia and Delusions in Alzheimer's Disease.2023.

ちなみにパラノイア(paranoia)とは、主に妄想的な思考や異常な不信感を特徴とする精神状態の一種です。対応方法については、国内のものより項目が多く、より具体的に感じます。
 私が注目したのは、「行動ログを使用して、引き金となる要因や発生する時間帯を特定する」です。2ヶ月余りの介護生活で母の独言のトリガーとタイミングはすべて記録しています。

  • 父の怒号や罵声

  • 物探し

  • アルコール

  • 食後30~60分

前兆もあります。

  • 多弁

  • 目がうつろ

「多弁」と「目がうつろ」はセットかもしれません。あくまで母の場合ですが。今朝の場合は、朝食前から目がうつろでよく喋っていました。そして食後1時間経たないころ、あることを忘れていた母に父が激怒し罵声を浴びせます。その直後に母の独言が始まったのです。

未だ解決策あらず

 嫉妬妄想と独言の対処方法を調べてきましたが、残念ながら有効な対処法は見つかっていません。諸々試してきましたが、現状寛解を待つのみです。薬物療法に期待するしかないのかとも感じています。介護生活が始まってたった2ヶ月、この先自分は介護を続けることができるのか。不安でしかありません。
「母が倒れるか、私が倒れるか」
気分が落ちている時は、そう考えることもあります。父はこの生活を4年続けています。もちろんもっと長期間の介護生活を経験しておられる方も大勢いるわけです。
 今はっきり言えることは、認知症について学ぶ行為が母への注意が半減し、イライラも軽減されています。

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